不運すぎる私が入学した学校には、強運すぎるボス?がいました
大吉くんは完全に舎弟=友達だと思っているし、朝比奈くんは朝比奈くんでそんなもんだ(たまに命令してくれたら)、とうまく舎弟になろうとしているし…。
私はどうしたらいいんだ……!

そんな頭を抱えている私の肩にポン、と手を乗せて大吉くんが一言。


「新しい友達が出来たと思えばいいんですよ」


爽やかに、それはそれは綺麗に微笑んでいるけれど、その顔の裏には全て『面白そうだし』が含まれているってことを、私は昨日と今日で早々に学んだ。


「でもなぁ…」

「逆を言えば、私は命令をしない、と命令すればいいんですよ。普通の友達でいてください、って」

「!なるほど…その命令いいね!」


私たちの会話を聞いていたのか、聞いていなかったのか朝比奈くんは五つめのパン(メロンパン)を食べ終えたところだった。
私は居住まいを正し、朝比奈くんと向き合う。


「朝比奈くん!」

「おう、なんだ?」

「早速命令してもいいかな?」

「お!いいね?なんだなんだ?」


朝比奈くんはしっかりと目を合わせてニカッと笑った。
ふわふわのピンク髪に、少し細めの目がこれでもかとアーチを描き、八重歯が可愛く笑った口の端から見えている。よく見ると可愛い印象の朝比奈くん。こんな子に最初で最後の命令──。


「私の命令は…命令をしない、っていう命令で」

「あン?命令をしない命令ってなんだそれ」

「だから、私は命令したくないから…それでも許してねっていう命令ってことで」


命令のゲシュタルト崩壊である。
ふたりで命令が、命令で、と言っていてだんだんわけがわからなくなってしまっている。朝比奈くんも首を傾げて、私も今はどこの命令の説明をしているんだ?となってしまって………で、何の話?


「はいはい。ふたりとも落ち着きましょう」


ここで助け舟、だと思いたい大吉くんが手を叩いて一旦ストップをかけてくれる。


「わかりやすくいうと、臼井さんは朝比奈くんと友達になりたいということです」

「なるほどな?別にいいぜ、お前マジで危なっかしいからダチとして助けてやるよ」

「ほ、ほんと?命令なしの友達がいいんだけど…っていう命令で」

「しゃーねーな、お前がそう命令するんならな!」


なんとか丸く収まってくれた、のかな?
朝比奈くんも「ダチな、おっけ」と、私の机にあんが飛び出しているあんぱんを置いてくれて、一旦舎弟云々の話は忘れてくれたようだった。ちなみに、あんぱんは私の大好物である。

このアラクレの巣窟でふたりの友達、といってもいいのかわからないけれど、それに近い存在が出来たのは大きい。朝比奈くんは舎弟云々を除けばわりとまともな感性を持っているし、喧嘩好きではあれど常識人なほうだ。
一方の大吉くんはというと……。


「良かったですね、楽しくなりそうで!」


にっこりと綺麗すぎる笑みを見せてくれる大吉くん。

私に、というより自分に向けて言っているようにも聞こえるその台詞は、教室内で勃発した喧嘩の声に消えていったのであった……。
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