不運すぎる私が入学した学校には、強運すぎるボス?がいました

第二話 そうは問屋が卸さない

昨日よりも足取り軽く学校へ向かう。

毎日大なり小なりの不運に巻き込まれている私にとっては昨日の事故もそのひとつであり、すっかり頭の片隅に追いやられていて、大部分を占めるのは「大吉亜門」というひとりの男子生徒のことだった。


気を失って廊下に放置されていてもおかしくないアラクレ学園、そんな中ご丁寧に保健室まで運んでくれた心優しき「大吉亜門」くん。

きっと数少ないマトモな生徒なのだろう。
私も不運であることを除けばマトモな生徒だ。

彼と支え合って……卒業まで頑張ろう…。


校門を抜け、靴箱で上履きに履き替えているときにどこからともなく飛んできた雑巾が頭に直撃したけれど、そんなことはチャラに出来ちゃうくらい、私の機嫌はそれなりに最高潮だった。




廊下を歩き、職員室の前に立つ。

空いている扉からB組の担任の先生を探していると、後ろから「誰か…探しているのかな?」と柔らかい優しげな声が聞こえてきた。振り向けば、ひょろりと伸びた背を丸めて、ぼそぼそと喋る少し頼りない男の人……。


「えと…一年B組の担任の先生を探していて…」

「僕がB組の担任、笹川(ささがわ)です」


失礼だけれど、この学校でやっていけているのが不思議なくらいひょろっとした体格。
昨日の体育館で見た先生の多くはガタイも良くて声も大きかったから、少し驚いてしまった。もしかしたら笹川先生も私のように迷い込んでしまったタイプなのかもしれない。


「昨日はすみませんでした、ホームルームをサボることになっちゃって…」

「大丈夫だよ。毎年ひとりは体調崩しちゃうんだ…」


それ昨日も原田先生が言っていたな…。
毎年の入学式がいろんな意味で壮大だということがよくわかる。

扉の前では邪魔だから、と笹川先生は自分の机のところまで連れて来てくれて、昨日のホームルームの内容と、私の席の場所を教えてくれた。
早速席替えをしたとのことで、私は一番後ろの窓際。こういうときに限って先生の目が届きやすい一番前の席にならないあたり、不運だなと思う。



先生から連絡事項などが書かれたプリントも貰い、職員室を後にした。
向かうは教室。昨日途中までのぼっていた階段を今日はのぼり切り、いざB組の扉の前に立った……。けれど、手がなかなか引き戸を引いてはくれない。

よく考えたら初めて教室に入るのだ。しかもアラクレたちの巣窟。女子は私だけ。おそらく頼りになるのは大吉くん、その人のみ。


入るか、入らないか……と、手を出したり引っ込めたりしていると、後ろからヌッと手が伸びてきて、思い切り引き戸を左へ動かした。
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