急募 ガチムチ婚約者募集 *但し45歳以上に限る
24
※ルディガー視点です。
「はぁ~……」
白い息が目の前で舞う。足元は深い雪に覆われ、足音を吸い込むように沈んでいく。
ここは、北部山間地域。この地域では真白な毛で覆われた狼や熊が出没する。その毛は寒さから身を守るために、柔らかく暖かい。ここに住む者たちはその毛皮を防寒として使用しているが、不必要に殺したりはしていない。
だが、最近になり、その毛皮に目を付けた者らがいる。
人を襲う獣なら駆除という名目で狩っても罪に問われないという独自の正当化理論を打ち出し、密猟し放題となっているらしい。
見境なく獣を狩れば、自然の生態系は崩れ、いずれ人里にも影響がでる。
「どこにも阿呆はいるもんだな」
「呑気なこと言ってないで、こっち手伝ってくださいよ」
「あぁ、悪い」
のんびりと空を見あげながら呟く団長に声をかけた。
「もう、寒いんですから早いとこテント張りますよ」
この季節の嫌なところは、足跡を雪が綺麗に消してしまうことだ。
獣の足跡も人の足跡も、まるで何も無かったように真白に埋め尽くされてしまう。
その為、夏場に比べて冬場の方が体力的にも精神的にもキツイ。毎年、根をあげる騎士が後を絶たないぐらいにはキツイものだと思っている。
(その点、俺は何ともなかったけどね)
新人で腕を買われ、その年にはこうして任務に出た。通常、新人は遠征への同行は許可されていない。剣の扱いも分かっていない未熟者を連れてきても足手まといなだけ。当然、俺も任務には同行不可だと思っていたのに、突如団長が許可すると言い出した為、急遽同行が決まった新人の冬。
「さて、出来たな」
ハッと我に返った時には、テントは綺麗に張られていた。
「夕刻には物資班も到着するだろう」
出発時のダラケた顔とは売って違って、険しく引き締まった団長らしい面持ちで他の騎士らに指示を出していく。
婚約者が見送りに来るなとは言わない。だが、今までまともに恋愛をしてこなかったこの人にとって、ミーリアムは眩しすぎる。
これまで築いてきた団長としての威厳よりも、彼女に会えた喜びが勝るぐらい心酔している。
(本人にその自覚があるのかは不透明だけどね)
ジッと団長に視線を向けていると「なんだ?」と怪訝な顔をされた。
「なんでもないですよ」
軽く誤魔化した。
しばらくすると、他でテントを張っていた騎士たちも集まってきた。こうなると、一気に賑やかさが増す。
「団長、最近ミーリちゃんとはどんな感じですか?」
「どこまでいきました?」
「バッカだなぁ、誠実が服着てるような人だぞ?下手したら手すら握ってないだろ」
野郎が集まれば下世話な話になるのは必然的だが、如何せん言いたい放題すぎる。いくら団長でも、大人の付き合いぐらいは余裕で……
(ん?)
横目で確認すると、気まずそうに目を伏せる団長の姿が飛び込んできた。
「嘘でしょ!?もしかして、全く手を出してない訳じゃないよね!?」
思わず詰め寄ってしまった。
確かに一度は俺が止めたけど、あれは場所が場所だったし、まだ団長に迷いがあったから止めたに過ぎない。
「あははは!流石団長、期待を裏切らないなぁ!」
「でもさぁ、女の子によっては不安になる子もいるよねぇ」
「そうそう、自分に魅力がないんじゃないかとかなんとか言ってな!」
周りは楽しげに笑ってるが、当の本人は全く笑ってないのに気づいているんだろうか……
重くなる空気に耐えられず「おい」と声を掛けようと口を開きかけた時
「──ですから団長、チャッチャと終えて嬢ちゃんの所へ帰りましょう」
「!」
全員が笑顔で団長に進言した。
(驚いた…)
今回の任務は当初、短期間で済むと言われていたが、相手側に頭のキレる奴がいるのか、尻尾がまったく見つからない。更には天候もあまり良くなく、長期戦覚悟なのだろうと全員が薄々勘づいている。こうなると、騎士らの士気も次第に下がってくるが、今の彼らは下がるどころか士気が高揚している。
(少しでも早く団長をお嬢さんの元に帰そうとしているのか)
「ははっ」
(参ったね。彼女は団長だけではなく、ちゃっかり団員の心まで掴んじゃったか)
そう言う俺も彼女の事は気に入ってるんだけどね。あんな面白い娘は初めてで、揶揄うのが楽しくて仕方ない。
「ふぅ…」
しばしの休息。雪もチラつき始め、今夜は吹雪になりそうだと思いながら厚い雲に覆われた空を見あげた。
「はぁ~……」
白い息が目の前で舞う。足元は深い雪に覆われ、足音を吸い込むように沈んでいく。
ここは、北部山間地域。この地域では真白な毛で覆われた狼や熊が出没する。その毛は寒さから身を守るために、柔らかく暖かい。ここに住む者たちはその毛皮を防寒として使用しているが、不必要に殺したりはしていない。
だが、最近になり、その毛皮に目を付けた者らがいる。
人を襲う獣なら駆除という名目で狩っても罪に問われないという独自の正当化理論を打ち出し、密猟し放題となっているらしい。
見境なく獣を狩れば、自然の生態系は崩れ、いずれ人里にも影響がでる。
「どこにも阿呆はいるもんだな」
「呑気なこと言ってないで、こっち手伝ってくださいよ」
「あぁ、悪い」
のんびりと空を見あげながら呟く団長に声をかけた。
「もう、寒いんですから早いとこテント張りますよ」
この季節の嫌なところは、足跡を雪が綺麗に消してしまうことだ。
獣の足跡も人の足跡も、まるで何も無かったように真白に埋め尽くされてしまう。
その為、夏場に比べて冬場の方が体力的にも精神的にもキツイ。毎年、根をあげる騎士が後を絶たないぐらいにはキツイものだと思っている。
(その点、俺は何ともなかったけどね)
新人で腕を買われ、その年にはこうして任務に出た。通常、新人は遠征への同行は許可されていない。剣の扱いも分かっていない未熟者を連れてきても足手まといなだけ。当然、俺も任務には同行不可だと思っていたのに、突如団長が許可すると言い出した為、急遽同行が決まった新人の冬。
「さて、出来たな」
ハッと我に返った時には、テントは綺麗に張られていた。
「夕刻には物資班も到着するだろう」
出発時のダラケた顔とは売って違って、険しく引き締まった団長らしい面持ちで他の騎士らに指示を出していく。
婚約者が見送りに来るなとは言わない。だが、今までまともに恋愛をしてこなかったこの人にとって、ミーリアムは眩しすぎる。
これまで築いてきた団長としての威厳よりも、彼女に会えた喜びが勝るぐらい心酔している。
(本人にその自覚があるのかは不透明だけどね)
ジッと団長に視線を向けていると「なんだ?」と怪訝な顔をされた。
「なんでもないですよ」
軽く誤魔化した。
しばらくすると、他でテントを張っていた騎士たちも集まってきた。こうなると、一気に賑やかさが増す。
「団長、最近ミーリちゃんとはどんな感じですか?」
「どこまでいきました?」
「バッカだなぁ、誠実が服着てるような人だぞ?下手したら手すら握ってないだろ」
野郎が集まれば下世話な話になるのは必然的だが、如何せん言いたい放題すぎる。いくら団長でも、大人の付き合いぐらいは余裕で……
(ん?)
横目で確認すると、気まずそうに目を伏せる団長の姿が飛び込んできた。
「嘘でしょ!?もしかして、全く手を出してない訳じゃないよね!?」
思わず詰め寄ってしまった。
確かに一度は俺が止めたけど、あれは場所が場所だったし、まだ団長に迷いがあったから止めたに過ぎない。
「あははは!流石団長、期待を裏切らないなぁ!」
「でもさぁ、女の子によっては不安になる子もいるよねぇ」
「そうそう、自分に魅力がないんじゃないかとかなんとか言ってな!」
周りは楽しげに笑ってるが、当の本人は全く笑ってないのに気づいているんだろうか……
重くなる空気に耐えられず「おい」と声を掛けようと口を開きかけた時
「──ですから団長、チャッチャと終えて嬢ちゃんの所へ帰りましょう」
「!」
全員が笑顔で団長に進言した。
(驚いた…)
今回の任務は当初、短期間で済むと言われていたが、相手側に頭のキレる奴がいるのか、尻尾がまったく見つからない。更には天候もあまり良くなく、長期戦覚悟なのだろうと全員が薄々勘づいている。こうなると、騎士らの士気も次第に下がってくるが、今の彼らは下がるどころか士気が高揚している。
(少しでも早く団長をお嬢さんの元に帰そうとしているのか)
「ははっ」
(参ったね。彼女は団長だけではなく、ちゃっかり団員の心まで掴んじゃったか)
そう言う俺も彼女の事は気に入ってるんだけどね。あんな面白い娘は初めてで、揶揄うのが楽しくて仕方ない。
「ふぅ…」
しばしの休息。雪もチラつき始め、今夜は吹雪になりそうだと思いながら厚い雲に覆われた空を見あげた。