急募 ガチムチ婚約者募集 *但し45歳以上に限る
25
※ルディガー視点です。
周囲が薄暗くなり、本格的に雪が降り始めた頃──
「あ!いたいた!おぉ~い!」
「お、来たか」
大きく手を振りながらこちらに向かってくるのは、騎士歴四年のグレグ。その後にも数人の騎士の姿がある。彼らは、下の町から物資を届けに来てくれた物資班。物資と言っても大半が食料なんだけどね。
「今回は町長さんが皆さんにと、酒までくれましたよ!」
「「おぉぉぉぉぉ~~~!!」
グレグの言葉に歓声が響く。こうしてたまに、酒の差し入れもあるのは有難い。この厳しい環境では、こんな些細なことが楽しみとなる。
酒があると分かった団員らは、団長や俺を差し置いて取り合うように酒を呷り始めてる。
「グレグ、ご苦労だった」
一息つくグレグに団長が労いの言葉をかけた。
「いいえ~。僕、力はありますけど戦闘向きじゃないですからねぇ。物資班が丁度いいんですよ」
「物資班も立派な騎士の仕事だ。もっと誇っていいぞ」
「へへっ」
団長に褒められ、照れくさそうに顔を逸らしていた。
『剣を振るうばかりが騎士じゃない』
この人の教えはしっかり下の代にも受け継がれているようだ。
「あ、そうだ。団長の婚約者殿が、街で男と一緒にいたらしいですよ」
「「!?」」
世間話のように軽く言ってるが、火薬庫に火を放ったぐらいの衝撃発言。その場にいた全員がグレグに注目した。
「──…は?」
「なんでも人気のカフェで二人お茶をしてたり、仲良く手を繋いで街を散策──」
グレグは、顔を引き攣らせる団長に気付かず話を進めていく。流石にまずいと思ってすぐにグレグの口を塞いだが、もはや手遅れ。
先ほどまで騒がしかった場が一瞬にして凍り付くほどの威圧感が肌に纏わり付いてくる。
「……グレグ。知ってることを全て話せ」
地の底から這いあがった様な低く、押し籠った声に全員が息を飲んだ。
「でも……僕も又聞きした話ですし……」
「構わん」
止めに入りたいところだが、これは邪魔したら秒で殺られる。俺だって命は惜しい。それはこの場にいる全員が同じこと……要は、止めれる者が誰もいない。
グレグはゴクッと唾を飲み、団長の顔色を伺いつつ恐る恐る口を開いた。
「えっと、ですねぇ……一通りデート?を楽しんだらしい二人は、仲睦まじく帰路へ着いていたらしいんですけど、別れを惜しむように路地裏で熱い抱擁とキスを交わしてるのを、巡回してる騎士が目撃したらしいです」
「いやぁ、女って怖いですね」なんて明るく付け加えているが、フォローになってない。
「で、ででででも、又聞きなんだよな!?そんなもん当てにならないよな!?」
「そ、そうですよ!あのミーリちゃんですよ!?団長以外の男?ありえないですって!」
間髪入れずに周りの団員が笑顔を引き攣らせながらフォローを入れてる。俺だって、あの子に限ってそれはないと思っている。
(でもなぁ~)
女心は変わりやすいって言うし、疑いを拭いきれない。
「でもぉ、男の方は煽るように見せ付けてきたって言ってましたよ?」
「お前ちょっと黙れ!」
更に傷口に塩を塗り込もうとするグレグを側にいた団員が抑えつけて止めた。
「団長、気にすることないですからね!」
「そうそう!見間違いですって!」
必死に誤解だと伝えているが、それを俺らの口から聞いたところでなんの気休めにもならない。
面倒臭いことになったなと思いつつ、小さく息を吐いた。
「団長、大丈──ッ!」
声を掛けかけたが、ゴキュッと喉を鳴らしながら言葉を飲み込んだ。
その表情はお世辞にも穏やかとは言えない。戦場でも感じたことの無いほどの殺気に満ち、峻厳な内面をものがたる眼差しで前を見据えていた。
「……少し、出てくる。ルディガー、後は頼んだ」
「は!?今からですか!?」
今夜は吹雪になるだろう事は団長も分かってる。分かった上で剣を手にし、躊躇なく雪深い奥へ足を進めている。
頭を冷やしてくるなら分かるが、出てくる?その意図する先は──?
しばらく考えた後、ハッとした。
「ちょっと!待ちなよ!もしかして、一人で狩るつもり!?」
声をかけるが、振り返ることなく先に進んで行ってしまう。
今すぐに帰還して真相を確かめたいが、団長である自分がこの場を離れる訳にはいかない。ならば、この任務を自分で終わらせればいい。──……とでも思っているのだろう。
『出てくる』と言い放ったのは、頭を冷やすつもりは毛頭ないと言う意味なのだろう。
正直、この状態で一人にするのは危険だが、側にいる方も危険。団員を護る為にもここは動けない。
「チッ!」
八方塞がりの状況に舌を激しく打つ。
「団長!せめて殺さないように頼みますよ!」
その言葉が届いかは分からない。後は信じるしかない。
嵐のあとの静けさと言った感じか……誰もが団長の殺気に当てられ動けずにいる。
「……あの~…もしかしなくても、僕やっちゃいました?」
沈黙を破るように、グレグが俺に声をかけてきた。悪気がない分、よけいにタチが悪い。
折角の酒の席が台無しだな。クソ…!
「はぁぁ~……お前ら、殺れ」
「「ッしゃぁぁぁ!!」
頭を抱えながら、団員らに合図すると待ってましたと言わんばかりにグレグに飛び掛かった。
グレグは揉みくちゃになりながら何やら叫んでいたが、団長の傷に比べれれば可愛いものだ。甘んじで受け入れろ。
「あ~ぁ…いい歳した男の嫉妬は何よりも恐ろしいんだよ?」
クシャッと髪を乱しながら呟いた。
特にあの人の場合、お嬢さんを大切にしたい気持ちが溢れすぎて、無意識に自分で自分に枷をかけている。
その枷が外された時、団長は自分を抑えられるだろうか……
「躾のなってる獣も、一歩間違えれば猛獣になる。……お嬢さん、覚悟しときなよ?」
グレグの悲鳴を聞きながら、今はまだ何も知らないミーリアムに祈りを捧げた。
周囲が薄暗くなり、本格的に雪が降り始めた頃──
「あ!いたいた!おぉ~い!」
「お、来たか」
大きく手を振りながらこちらに向かってくるのは、騎士歴四年のグレグ。その後にも数人の騎士の姿がある。彼らは、下の町から物資を届けに来てくれた物資班。物資と言っても大半が食料なんだけどね。
「今回は町長さんが皆さんにと、酒までくれましたよ!」
「「おぉぉぉぉぉ~~~!!」
グレグの言葉に歓声が響く。こうしてたまに、酒の差し入れもあるのは有難い。この厳しい環境では、こんな些細なことが楽しみとなる。
酒があると分かった団員らは、団長や俺を差し置いて取り合うように酒を呷り始めてる。
「グレグ、ご苦労だった」
一息つくグレグに団長が労いの言葉をかけた。
「いいえ~。僕、力はありますけど戦闘向きじゃないですからねぇ。物資班が丁度いいんですよ」
「物資班も立派な騎士の仕事だ。もっと誇っていいぞ」
「へへっ」
団長に褒められ、照れくさそうに顔を逸らしていた。
『剣を振るうばかりが騎士じゃない』
この人の教えはしっかり下の代にも受け継がれているようだ。
「あ、そうだ。団長の婚約者殿が、街で男と一緒にいたらしいですよ」
「「!?」」
世間話のように軽く言ってるが、火薬庫に火を放ったぐらいの衝撃発言。その場にいた全員がグレグに注目した。
「──…は?」
「なんでも人気のカフェで二人お茶をしてたり、仲良く手を繋いで街を散策──」
グレグは、顔を引き攣らせる団長に気付かず話を進めていく。流石にまずいと思ってすぐにグレグの口を塞いだが、もはや手遅れ。
先ほどまで騒がしかった場が一瞬にして凍り付くほどの威圧感が肌に纏わり付いてくる。
「……グレグ。知ってることを全て話せ」
地の底から這いあがった様な低く、押し籠った声に全員が息を飲んだ。
「でも……僕も又聞きした話ですし……」
「構わん」
止めに入りたいところだが、これは邪魔したら秒で殺られる。俺だって命は惜しい。それはこの場にいる全員が同じこと……要は、止めれる者が誰もいない。
グレグはゴクッと唾を飲み、団長の顔色を伺いつつ恐る恐る口を開いた。
「えっと、ですねぇ……一通りデート?を楽しんだらしい二人は、仲睦まじく帰路へ着いていたらしいんですけど、別れを惜しむように路地裏で熱い抱擁とキスを交わしてるのを、巡回してる騎士が目撃したらしいです」
「いやぁ、女って怖いですね」なんて明るく付け加えているが、フォローになってない。
「で、ででででも、又聞きなんだよな!?そんなもん当てにならないよな!?」
「そ、そうですよ!あのミーリちゃんですよ!?団長以外の男?ありえないですって!」
間髪入れずに周りの団員が笑顔を引き攣らせながらフォローを入れてる。俺だって、あの子に限ってそれはないと思っている。
(でもなぁ~)
女心は変わりやすいって言うし、疑いを拭いきれない。
「でもぉ、男の方は煽るように見せ付けてきたって言ってましたよ?」
「お前ちょっと黙れ!」
更に傷口に塩を塗り込もうとするグレグを側にいた団員が抑えつけて止めた。
「団長、気にすることないですからね!」
「そうそう!見間違いですって!」
必死に誤解だと伝えているが、それを俺らの口から聞いたところでなんの気休めにもならない。
面倒臭いことになったなと思いつつ、小さく息を吐いた。
「団長、大丈──ッ!」
声を掛けかけたが、ゴキュッと喉を鳴らしながら言葉を飲み込んだ。
その表情はお世辞にも穏やかとは言えない。戦場でも感じたことの無いほどの殺気に満ち、峻厳な内面をものがたる眼差しで前を見据えていた。
「……少し、出てくる。ルディガー、後は頼んだ」
「は!?今からですか!?」
今夜は吹雪になるだろう事は団長も分かってる。分かった上で剣を手にし、躊躇なく雪深い奥へ足を進めている。
頭を冷やしてくるなら分かるが、出てくる?その意図する先は──?
しばらく考えた後、ハッとした。
「ちょっと!待ちなよ!もしかして、一人で狩るつもり!?」
声をかけるが、振り返ることなく先に進んで行ってしまう。
今すぐに帰還して真相を確かめたいが、団長である自分がこの場を離れる訳にはいかない。ならば、この任務を自分で終わらせればいい。──……とでも思っているのだろう。
『出てくる』と言い放ったのは、頭を冷やすつもりは毛頭ないと言う意味なのだろう。
正直、この状態で一人にするのは危険だが、側にいる方も危険。団員を護る為にもここは動けない。
「チッ!」
八方塞がりの状況に舌を激しく打つ。
「団長!せめて殺さないように頼みますよ!」
その言葉が届いかは分からない。後は信じるしかない。
嵐のあとの静けさと言った感じか……誰もが団長の殺気に当てられ動けずにいる。
「……あの~…もしかしなくても、僕やっちゃいました?」
沈黙を破るように、グレグが俺に声をかけてきた。悪気がない分、よけいにタチが悪い。
折角の酒の席が台無しだな。クソ…!
「はぁぁ~……お前ら、殺れ」
「「ッしゃぁぁぁ!!」
頭を抱えながら、団員らに合図すると待ってましたと言わんばかりにグレグに飛び掛かった。
グレグは揉みくちゃになりながら何やら叫んでいたが、団長の傷に比べれれば可愛いものだ。甘んじで受け入れろ。
「あ~ぁ…いい歳した男の嫉妬は何よりも恐ろしいんだよ?」
クシャッと髪を乱しながら呟いた。
特にあの人の場合、お嬢さんを大切にしたい気持ちが溢れすぎて、無意識に自分で自分に枷をかけている。
その枷が外された時、団長は自分を抑えられるだろうか……
「躾のなってる獣も、一歩間違えれば猛獣になる。……お嬢さん、覚悟しときなよ?」
グレグの悲鳴を聞きながら、今はまだ何も知らないミーリアムに祈りを捧げた。