君と未完成を綴って。
一 放課後と掛詞

一⑴ 少女と少年


「……詩語さん、小説書いてるの?」

「ひぇぁっ!? せせせせっ、瀬川くん!?」


音もなく現れた瀬川くんに本気でびっくりして、めちゃくちゃおっきい声が出た。

慌てて口を塞いで周りを見ると、誰もいないみたいだ。

よ、よかった……。


「せっ、瀬川くん、なんでここにっ……」

「昨日、詩語さん帰宅部って言ってたから。いるかなって、試しに。まさかホントにいるとは思ってなかった」

「試しってなんの試し……!!」


小声で叫んで、開きっぱなしのノートを高速で閉じる。

あっぶない、見られるところだった。


「どんなの書いてるの?」

「いやーえっと……あはは……」


興味津々って目で、座っている私に距離を縮めてくる瀬川くん。

いいように誤魔化しきれず、フツーに濁した。

こういう時に言葉出てこないのって、語彙力の問題じゃないと思うんだよねっ。


「読んでみたい」

「えっ、ダメっ」


一生のお願いです、とでも言うような目で見つめられる。

ダメなものはダメだ。

知らない人に見られる投稿サイトならまだしも、同級生! 隣の席の!!


「なんで?」

「なんでも!」


静かな攻防を続けていたら、瀬川くんがしゃがんで、私を見上げてきた。


「読みたい」


それはそれは可愛い上目遣い。

瀬川くん、良い意味で心臓に悪いっ!

わざとじゃなさそうなのがまたずるい……!


「……瀬川くんも、小説、読むの?」


絞り出した声は、思いのほか小さくなった。


「うん、読む。……好き」


ぽつりと床に向かって落とされた「好き」に、私が言われてるわけじゃないのに、心臓がきゅーっとなる。

あ。

……これが、いつもヒロインが体感してる、トキメキ……?


「……瀬川くん」

「なぁに?」


ぎゅっと手に力を込めながら、瀬川くんにノートを差し出した。
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