【試し読み】年下わんこなパイロットと思いきや、腹黒な雄の愛の罠に絡めとられました【極上のギャップ男子シリーズ】
「空森さん、今度僕も連れていってくださいよ」
風早君がぐいっと体を前に乗り出した。
「なんだよ、俺が今日誘った時は大事な用事があるって断ったくせに。空森となら一緒に行くのか?」
「それはそうですよ。千晴さんは特別ですから」
「ふーん、特別ねぇ」
村瀬機長はニヤニヤしながら、私と風早君の顔を交互に見ている。
「風早君、変な言い方しないで」
「僕本当の事しか言ってないのに」
「ははは、本当のことか! それはいい」
心底楽しそうに笑っている村瀬機長を軽く睨む。完全におもしろがっている。
「おふたりとも、そろそろブリーフィングの時間ですよ」
この場にいたら、いつまでもからかわれそうだ。私はすでに準備は終わっているにもかかわらず、逃げだすために再度チェックを始めた。
すぐに全員が揃って、ブリーフィングが始まった。
いつも通り呼気検査や健康状態、持ち物確認と進めていく。
週末だから満席だ。お手伝いを必要とする顧客も数人いらっしゃる。こういう時こそクルー同士の連携が大切になってくる。
みんなわかっているだろうけれど、改めて話をしておく。当たり前のことを積み重ねるのが安全で快適に目的地に到着するためには必要だ。
「あと、本日は特別なお客様のご予約がありますので……注意してください」
新人のCAがきょとんとしているが、意味がわかっている人は気の毒そうに風早君を見ていた。視線を向けられた彼は少し肩を竦めてみせた。
この〝特別なお客様〟というのは、VIP客を指しているのではない。少々厄介という意味の特別なのだ。
今回は風早君の熱烈なファンが搭乗予定となっている。
風早君は彼の能力とルックスから、会社の広報にひと役かっている。いや、ひと役どころかかなりの効果を発揮している。
しかしその効果の弊害として、一部過激なファンがあらわれるようになった。
空港で待ち伏せくらいならまだしも、帰宅中後をつけたり、SNSを監視したりと、ストーカー行為に及ぶ人も出てきたのだ。
会社や顧問弁護士を通じて警告をしたりもするが、応援だと言われると線引きがなかなか難しい。
今のところ大きな実害はないが、対応に苦慮している。
こういう情報もきちんと共有しておかなくてはいけない、よく理解していなさそうなCAにはのちほど、CAだけの打ち合わせの際に話をしておこう。