【試し読み】年下わんこなパイロットと思いきや、腹黒な雄の愛の罠に絡めとられました【極上のギャップ男子シリーズ】
空港から二十分ほど車で走ったところにある、深夜営業のレストランの駐車場に車を止めた。夜遅くまで営業している上に、食事の種類も豊富だ。
ただ気になるのは、空港関係者が時々利用していることだ。
「いらっしゃいませ」
夜遅い時間にもかかわらず、気持ちいい挨拶で迎えてくれた。私も見習いたい。しかし今はそれよりも周囲を確認するのに必死だ。
「千晴さん、席あそこでいいですか?」
窓際の席を指さす彼に、私は全力で否定した。
「ダメダメ、外から丸見えじゃない。あっちの席にしよう」
私が奥まった席を指さすと、スタッフがすぐに案内してくれた。
ふたりで向かい合って座る。風早君は私の方にメニューを向けてくれた。
「窓際の席でよかったのに」
風早君は席に不満げだったが、私は譲るつもりはない。
「ダメだよ。今日だって特別なお客様がいらしてたんだから。もしまだ近くにいたら風早君が危ないでしょう?」
できれば知り合いに見られたくないという気持ちももちろんある。いろいろ詮索されるのは面倒だから。でもそれよりも大事なのは、風早君の安全だ。できるだけ危険な目に合わせたくない。
「僕なら平気なのに。でも……うれしいです。やっぱり千晴さんがいいな」
「いいって、なに? えーどれにしよう。どれも捨てがたい」
どれを見ても美味しそうだ。だが現在二十二時五十分。この時間に食事は危険すぎる。
今年三十三歳。三十歳を超えたあたりから気を付けていないと肌荒れしやすくなった。あとは二十代までは少し調整すればすぐに減っていた体重も、減りづらくなった。
ただでさえ不規則な勤務で疲れやすい。できる限り体のことは気を付けたい。
やっぱりサラダだけにしようかな……。
「ねぇ、風早君はなににするの?」
メニューから顔を上げて彼を見ると、ジッと私を見ている彼と目が合った。
「なに? どうかした?」
びっくりした。私の顔になにかついているのかと思って頬をさする。しかし彼は答えることなく笑みを深めた。
「僕はドリアにします。あとチキンバスケットとほうれん草とベーコンのソテー」
その細い体のどこにそんなに入っていくのかと思うほど食欲旺盛だ。
「わんぱくだね。えーどうしよう、私はシェフのおまかせサラダにしよう」
散々考えた末に無難にサラダを選んだ。これなら明日にも響かないだろう。
「本当にそれだけでいいんですか? ケーキは?」
「誘惑しないで」
食べたいけれど、必ず後悔する。私は断腸の思いでメニューを閉じた。
風早君が注文をすると、そう待つことなく料理が運ばれてきた。
消去法で選んだサラダだったけれど、ボリュームも満点で美味しい。風早君はテーブルの上に並んだ料理をすごい勢いでたいらげていく。
驚くのはものすごく食べ方が綺麗なことだ。なにをしていても目を引く人だと思う。
話をするために来たけれど、まずはこの腹ペコのコーパイの食欲を満たす方が先だ。
私たちは他愛のない話をしながら食事を楽しんだ。
食後、彼の前にはコーヒー、私はルイボスティーが置かれた。
「眠れなくならない?」
「むしろそうしたいんです。明日深夜のフライトなので」
そっか明日から海外なのか。
私にももちろん経験がある。前日から時差を考えた生活になるので、実際の拘束時間はすごく長い。
私はもう慣れたけど……他業種の人からだと大変に見えるんだろうな。