【試し読み】年下わんこなパイロットと思いきや、腹黒な雄の愛の罠に絡めとられました【極上のギャップ男子シリーズ】
世間が持っている「客寄せ天才パイロット」「愛され爽やか王子」というパブリックイメージなど、彼にとってはただの飾り、あるいは面倒事を回避するための都合の良い防壁にすぎない。
本気でどうでもいい。興味があるのは、たった一つだけだ。
スマートフォンを取り出し、画面を点灯させる。そこには、数日前にこっそり遠目から撮影した、真剣な顔つきでブリーフィング資料をめくる空森千晴の姿があった。もちろん、本人の許可など取っていない。
「……相変わらず、自分のことになると隙だらけなんだから」
冷ややかだった瞳が、画面の向こうの彼女を捉えた途端、とろけるような熱を帯びた甘い色に変わる。
「田舎の両親からのお見合い攻撃……。千晴さん、そろそろ限界でしょ?」
画面を優しく指先でなぞりながら、天翔の唇にちりばめられたのは、甘ったるくて、それでいて底知れぬ独占欲が滲む笑みだった。
偶然を装うことなど容易い。彼女を追い詰める面倒な外野を排除し、逃げ場をなくして、自分以外の選択肢をすべて消し去ることも。
すべては、あの優しくて少し抜けている大好きな人を、完全に自分のものにするためのステップにすぎない。
「――そろそろですね。僕の仕掛けた罠に、綺麗にハマってくれますか?」
誰にも聞かれない声で呟くと、再び完璧な『爽やかで人懐っこい後輩パイロット』の仮面を被り、軽やかな足取りでラウンジを後にした。
人生で一番大事なフライトを始めよう。
今度の目的地は――千春さん、君の心だ。