【試し読み】年下わんこなパイロットと思いきや、腹黒な雄の愛の罠に絡めとられました【極上のギャップ男子シリーズ】
今月は珍しく、地元である高松にステイする日があった。そういう日は翌日のフライトがよっぽど早い時間でなければ実家に顔を出すようにしている。
年末年始も仕事で、夏休みももちろん仕事だ。だからこういうチャンスに両親と会うことにしていた。
空港に到着してデブリーフィングを終えた後、すぐに母からの着信に気が付いてその場で出た。
すれ違う人たちに「おつかれさまでした」と挨拶をしながら電話をする。
「もしもし、どうかした?」
《あのね、明日は私とランチに行くから、予定を入れないでね》
「うん、ランチって『ベルフォートホテル』のいつものレストラン?」
《そうそう、ちゃんと約束したからね》
いやに念を押すなと思ったけれど、早く家に帰りたくてすぐに電話を切った。
「千晴さん、おつかれさまです。今日はご家に宿泊するんですよね?」
電話を終えた瞬間声をかけてきたのは、風早君だ。今日も彼と一緒のフライトだった。
「せっかくだから、千晴さんのおすすめの店とか案内してほしかったのに残念です」
「なんにもないよ、田舎だし」
「特別なものがなくてもいいんです。千晴さんが通っていた高校とかその頃通ったカフェとかいろいろ知りたいじゃないですか」
「そんなもの知ってどうするの?」
「知りたいんですよ。千晴さんのことなら、どんな小さなことでも」
「はい、はい。また今度ね」
呆れていると、話を切り上げるちょうどいいタイミングでロッカーの前に到着した。
「おつかれさまでした」
「おつかれさまです」
風早君はキラキラのスマイルで去っていった。