【試し読み】年下わんこなパイロットと思いきや、腹黒な雄の愛の罠に絡めとられました【極上のギャップ男子シリーズ】
「へ?」
現れたのは風早君だ。なぜここに現れたのだろうか。
いや、それよりもさっきの発言、いったいどういう意味?
頭の中が疑問だらけなのに、勝手に事態が進んでいく。
「お前、誰だよ」
怒りの籠った福島さんに、風早君が驚くべき返事をした。
「僕は、千晴さんとお付き合いしている風早です」
不審がっていた福島さんの顔が、怒りに満ちた。
「空森さん、これはどういうこと? 彼氏がいるのに見合いに来たのか?」
そんなふうに問い詰められても困る。風早は彼氏じゃないのだから。
どうしてこうなってしまったのか答えようがなくて、風早君の方を見る。
「どういうこと……なのかな?」
私が顔を引きつらせながら、風早君に尋ねる。すると彼は私の隣の椅子に座って腕を組んで不満そうな顔をした。
「僕と結婚するって約束したのに、他の男性とふたりで会うなんて。しかもちゃんと見てましたよ、これお見合いですよね?」
「そう……だね」
見られていたし、相手もいるので否定もできない。
いや、それよりも私いつ風早君と結婚するって言った?
私の中にない記憶をなぜ彼が持っているのだろうか。
「あの、風早君――」
私が彼に問い詰めようとしたところ、彼がテーブルの下で私の足をツンツンとつついてきた。顔を見ると、意味ありげな視線を向けてきた。
これは……話を合わせろということ?
今この場がお見合いの席で、かつ私が断ろうとしているのを彼は知っている。どうやら手伝ってくれるみたいだ。
お見合い相手の男性を見ると、先ほど私に対して自信満々だった態度とは明らかに違っている。
風早君のことを頭からつま先まで見て、顔を引きつらせてだまっていた。それも仕方ないだろう、彼を始めて見る人は、たいていそうなるから。
人って圧倒的な美しさを前にすると、一瞬思考が停止してしまう。致し方ないことだ。
それをいいことに、風早君がお見合い相手に笑いかけた。
「どこのどなたかわかりませんが、千晴さんのことは諦めてください。彼女は結婚してからもずっと僕と一緒に空を飛び続ける予定になっていますから。ね、千晴さん!」
「え、ええ」
よくもそんな嘘がペラペラと出てくるなと、感心しながら相槌を打つ。
こうなったら、理由はわからないけれど風早君の話にのって、この場を早くおさめたい。
その頃になれば、相手の男性も自我を取り戻したのだろう。今の状況を把握したようで不機嫌をあらわにする。
「付き合っている相手がいるなら、最初からそう言えよ。詐欺じゃないか」
おっしゃる通りだ。彼が怒るのは無理もない。できればその怒りは母に向けてほしいけれど。
騙されて連れてこられた私も一応被害者なのだが。
そんなことを言っても今さらしょうがない。わたしは「ごめんなさい」と頭を下げるしかできない。
「これは、君のお母さんにもしっかり伝えさせてもらうからな。俺みたいな条件のいい相手断ってその男を選ぶなんて本当に見る目がない。だから今まで独身なんだろうな」
自分だって独身じゃない――という言葉を飲み込んだ。