薫る雨の匂いに彩りを
 「………え?」

 一番最初に反応したのは瑠璃だった。空和は固まっていて、桜華は私のことをにらみつけている。

 「えっと、二人って知り合い?」

 瑠璃がなんとかそう言った。重苦しい空気が立ちこめて辺りを沈めていく。さっきまできらきらしていたはずの気持ちは一気にしぼんでいった。

 「違う……」

 私が絞り出すようにそう言うと、今度は繊月くんが目を丸くした。

 「え。綾音薫子(あやねかおるこ)ちゃんだよね?」

 その顔には困惑と、驚きと、あと他の何か。

 「え、あの俺「おい繊月!ナンパすんなよぉー!」

 何か言いかけた繊月くんを男子が遮った。ふざけたように繊月くんの肩を叩く。あははっ!っとみんな笑ってなんとか空気は元に戻ってきた。

 私も口角を上げて笑顔を作る。

 良かった。なんとかなった。

 『女の子はいつもにこにこしてなきゃいけないの。そうじゃないとお姫様にはなれないから。お姫様になりたかったら、にこにこしてなきゃいけないの。辛くても笑って、みんなを笑わせられるのがお姫様だから』

 その言葉が頭に戻ってきて、より一層頬の筋肉に力が入った。

 「え~……まあ、覚えてないならいいか……」

 不満そうな繊月くんを残し、私は用事があると言って学校を後にした。
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop