薫る雨の匂いに彩りを
 始業式から一ヶ月。わかったのは繊月彩という人間は本当に自由奔放で、身勝手で、自分勝手だということだった。

 そして、私は繊月彩が大嫌いだということだった。

 思っていることをなんでも言うしなんでも行動に移す。それでもクラスの女子からはきゃーきゃー言われて、男子からは慕われているんだ。

 対して、空和達と一緒に居ることはとても楽だった。

 何も考えず、活発で自己主張の強い三人にロールプレイングゲームのようについていけば良いだけだったから。

 「薫子ちゃん。今日空いてる?」

 わざわざ目の前にいる三人の美女を無視して繊月くんは私に話しかけてくる。空和の顔が曇り、瑠璃と桜華は私を睨みつけてくる。

 こんな時でも思いっきり嫌な顔をしたり暴言を吐いたりしてはいけない。

 だって、私は『優等生』だから。思いっきり嫌な顔をしてはいけないし思いっきり思っていることを吐き出せない。

 「私は空いてない。あ、空和は空いてるよ」
 「う、うん。私は空いてるよ」

 空和が嬉しそうに答えると凍っていた空気が融解していく。ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。

 「じゃ、いい。薫子ちゃんまた空いてる日教えてよ」

 やめてよ。やめて。それ、やめて。

 なんで空気読まないの。なんでそんなに自由なの。

 なんで、なんで私はそんな君に憧れてしまうの。

 嫌いだ。嫌いだから。話しかけないでよ。

 「あ、やっぱり空いてた」

 スマホを確認するふりをして呟く。繊月くんの顔がぱっと明るくなった。まるで夏の空に向かって胸をはる向日葵みたいににこりと笑う。

 「え、じゃあ
 「空和ー。一緒にいこ。瑠璃と桜華も」

 そしてこれがこの一ヶ月で身につけた知恵だった。

 遊びに誘われたら絶対に一人ではついて行かない。必ず空和を誘い、繊月くんと空和を近づける。

 私は空和の友達だから。私は空和を応援したいから。
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