薫る雨の匂いに彩りを
 『修学旅行の係決め』

 黒板に学級委員長がさらさらと書いていく。

 「係はくじで決めます。出席番号順にくじをひきにきてください」

 私は『綾音』なので出席番号が一番だ。自己紹介もなんでも一番最初になるのが本当に嫌だ。

 私は目だちたくないし他の人に合わせたい。なのに名字すら私の希望通りにはなってくれないらしい。

 「薫子。どうだった?」

 私のすぐ後の空和が聞いてくる。ぴらりと紙をめくると

 『しおり作り』

 と書かれていて、血の気が引いていく。

 他の人には色が見えないことを隠している。普通じゃないと思われるのが、同情されるのが嫌だから。

 「私は自由時間の企画だー。薫子と一緒が良かったな~」

 ぶうたれたように形の良い唇を尖らせる空和。さらさらの髪は今日は三つ編みにされていてゆらゆらと頭を動かすたびに舞っている。

 私は自分の癖毛を撫でた。長く伸びた癖毛は結ぶのも面倒くさくて諦めて背中に流している。

 各係の人は前に名前を書くようにと言われ、しおり作りのところに名前を書きにいく。

 「え」

 思わず小さな声が零れた。

 『繊月彩』

 定員二名のしおり作りのスペースには、世界一嫌いな名前が書いてあったから。
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