親が再婚したけど、どうやら義兄弟が八人いるらしい
②
それはそうだ。あの四人とは違って僕たちは、昔の母さんとの記憶がはっきりと残っている。
母さんが死んだのは、晴八が一歳のとき、つまり、そのとき僕はもう十二歳だった。
そんな動けないでいる僕たちに父さんは優しく声をかけた。
「一翔、亮二、巽三、四季、お前たちには受け入れがたい話かもしれない。それでも、どうか僕たちのことを受け入れてほしい」
そう言って、二人は頭を下げた。
「頭なんて下げなくても!父さん」
他の三人は涙ぐんでいた。でも、僕は…
僕たちには僕たちの幸せがあるように、父さんには父さんの幸せがある。そう思い、僕は二人の結婚を祝福することにした。けれども、僕は二人と関わることをそれ以来ほとんどしなくなった。
それから、緑さんは僕たちの家に頻繁に来るようになった。そして、最後には夕飯を作って帰る。母さんが死んでからの十四年間、男飯で育った僕にとって緑さんのご飯はなんだか温かみがあった。
僕はほとんど緑さんとは話さなかったが、弟たちはすでに緑さんに懐いているようだった。緑さんがこの家に来るなら、弟たちのことも安心だし、家を出ていくのもありだな、とそんなことまで考えていた。
どんなに緑さんといても、僕はどうしても、緑さんのことを母さんと呼ぶことはできない。
そんなある日、僕は午後から面談のあるクライアント用の資料を家に忘れたことに気が付き、家に取りに帰った。家に到着し入ると、家の中から音がする。四季かなと思い、音のする方向へ行くと、そこには料理をしている緑さんの姿があった。
「誰もいない僕たちの家で何をしているんですか?」
どう見たって、料理に違いないのにどうしても詰めてしまう。自分でもビックリするぐらいの低い声が出た。すると、緑さんは振り返って言った。
「あら、お帰りなさい、一翔くん。今、夕飯の支度をしてるのよ」
そう言ってふふと笑う緑さんを見て、僕の中で何かが切れた。
「別にしなくていいですよ!夕飯なんて、僕だって作れます!そんなことをしたって、僕があなたを母親だなんて認める日は来ません!」
やってしまったと思った。普段、僕はあまり感情的にはならないタイプのはずだったのに、気づいたら僕は思っていたことをそのまま言ってしまっていた。
「…?私、お母さんになるつもりはないわよ。そうねぇ…私のことはお姉さんとでも思って欲しいわ」
「何を言ってるんですか?お母さんになるつもりないなんて、そんなわけないでしょ」
「あるわよ。私は、あなたたちにとってお母さんは亡くなったお母さんだけだと言うのなら、それはそれでいいと思ってるの。だって、私のほうが新入りなのに、私のことをお母さんって思えって、そんな無茶な話あっていいはずがないと思っているのよ」
うんうんと頷きながら「だから、お姉さんって呼んで」と微笑みながら言った。
「お姉さん…」
「そうよ!うん、我ながらいい呼び方をつけたものね」
「呼びませんけどね」
「どうして!?」
そう言って、無邪気に笑う緑さんを見て、あぁ、こんな人だから、父さんは結婚しようと思ったのだと、納得した。
そして、その日の晩、僕は久しぶりにリビングを訪れた。
「あ!一翔にぃだ!」
「一翔兄さんがここに来るの珍しいね」
すぐに晴八と七音が寄ってくる。少し二人と話して、ダイニングの椅子に座っていた父さんに近づいた。
「父さん、いい人見つけたね」
そう言った後の父さんの驚いたような、少し嬉しそうな顔は一生忘れられないだろう。
母さんが死んだのは、晴八が一歳のとき、つまり、そのとき僕はもう十二歳だった。
そんな動けないでいる僕たちに父さんは優しく声をかけた。
「一翔、亮二、巽三、四季、お前たちには受け入れがたい話かもしれない。それでも、どうか僕たちのことを受け入れてほしい」
そう言って、二人は頭を下げた。
「頭なんて下げなくても!父さん」
他の三人は涙ぐんでいた。でも、僕は…
僕たちには僕たちの幸せがあるように、父さんには父さんの幸せがある。そう思い、僕は二人の結婚を祝福することにした。けれども、僕は二人と関わることをそれ以来ほとんどしなくなった。
それから、緑さんは僕たちの家に頻繁に来るようになった。そして、最後には夕飯を作って帰る。母さんが死んでからの十四年間、男飯で育った僕にとって緑さんのご飯はなんだか温かみがあった。
僕はほとんど緑さんとは話さなかったが、弟たちはすでに緑さんに懐いているようだった。緑さんがこの家に来るなら、弟たちのことも安心だし、家を出ていくのもありだな、とそんなことまで考えていた。
どんなに緑さんといても、僕はどうしても、緑さんのことを母さんと呼ぶことはできない。
そんなある日、僕は午後から面談のあるクライアント用の資料を家に忘れたことに気が付き、家に取りに帰った。家に到着し入ると、家の中から音がする。四季かなと思い、音のする方向へ行くと、そこには料理をしている緑さんの姿があった。
「誰もいない僕たちの家で何をしているんですか?」
どう見たって、料理に違いないのにどうしても詰めてしまう。自分でもビックリするぐらいの低い声が出た。すると、緑さんは振り返って言った。
「あら、お帰りなさい、一翔くん。今、夕飯の支度をしてるのよ」
そう言ってふふと笑う緑さんを見て、僕の中で何かが切れた。
「別にしなくていいですよ!夕飯なんて、僕だって作れます!そんなことをしたって、僕があなたを母親だなんて認める日は来ません!」
やってしまったと思った。普段、僕はあまり感情的にはならないタイプのはずだったのに、気づいたら僕は思っていたことをそのまま言ってしまっていた。
「…?私、お母さんになるつもりはないわよ。そうねぇ…私のことはお姉さんとでも思って欲しいわ」
「何を言ってるんですか?お母さんになるつもりないなんて、そんなわけないでしょ」
「あるわよ。私は、あなたたちにとってお母さんは亡くなったお母さんだけだと言うのなら、それはそれでいいと思ってるの。だって、私のほうが新入りなのに、私のことをお母さんって思えって、そんな無茶な話あっていいはずがないと思っているのよ」
うんうんと頷きながら「だから、お姉さんって呼んで」と微笑みながら言った。
「お姉さん…」
「そうよ!うん、我ながらいい呼び方をつけたものね」
「呼びませんけどね」
「どうして!?」
そう言って、無邪気に笑う緑さんを見て、あぁ、こんな人だから、父さんは結婚しようと思ったのだと、納得した。
そして、その日の晩、僕は久しぶりにリビングを訪れた。
「あ!一翔にぃだ!」
「一翔兄さんがここに来るの珍しいね」
すぐに晴八と七音が寄ってくる。少し二人と話して、ダイニングの椅子に座っていた父さんに近づいた。
「父さん、いい人見つけたね」
そう言った後の父さんの驚いたような、少し嬉しそうな顔は一生忘れられないだろう。