親が再婚したけど、どうやら義兄弟が八人いるらしい
9
「今日一日どうでしたか?何か困ったことはありませんでしたか?」
そう相田先生が聞いてきた。
「いえ、楽しかったです」
「それならよかったです。今からの時間は部活動が始まるのでもし時間があるなら、回って見学してみるのもおすすめですよ」
部活動見学、楽しいかもしれない。私は心ちゃんのいる手芸部が気になっていたのだ。
「わかりました、そうしてみます」
そう言って私は職員室から出て、教室に戻った。
教室に入るとそこには六月くんが机に向かって何かを書いていた。
(何を書いているのだろう)
話しかけたいが、まだそう気安く話しかけられる関係性ではない。まだ出会って一日なのだ。それでも、昨日のことは謝らないといけない。そんな思いがぐるぐると頭の中で駆け回っていた。
とりあえず、自分を落ち着かせようと、自分の席に戻り荷物をまとめながら、六月くんにかける第一声を考える。
すると、静まり返った教室で、六月くんのペン以外の音がかすかに聞こえた。
「……っ」
「…ん?」
「…だから、昨日は悪かった」
それは紛れもない六月くんの声だった。
バッと六月くんの方を向くと六月くんは顔を反対側に向けていた。髪の間から出ている耳が少し赤いような気がするのは六月くんの赤髪のせいだろうか。
「私こそ、助けてくれてありがとう」
「…別に」
「ごめんね、びっくりしすぎちゃって、巽三さんにも弁解できずに、あれから大丈夫だった?」
「大丈夫、そもそも、あんたの風呂に入った俺が悪い」
再び教室が静寂に包まれる。会話が続かない。
「何書いてるの?」
「日誌」
「今日、日直だったんだ…えーっと、あ!六月くんは何部なの?」
「柔道」
「そうなんだ、強いんだね、六月くんって」
「まだまだだ」
六月くんにとってはどうでもいい話かもしれないのに、その全てに返事をしてくれることに嬉しさを感じる。
「そういえば、晴くんって何部か知ってる?今日一緒に帰る約束をしているんだけど、部活あるのか聞きそびれちゃって」
「晴八はサッカー部、今ごろ中等部のグラウンドで練習してると思う」
「そうなんだ!ありがとう、六月くん、行ってみる!」
六月くんにお礼を言って私は教室から出た。
昼休みの経験から晴くんにも確実にファンクラブはあり、規律というものもあるのだろう。できる限り目立たないように、晴くんと話すには…と作戦を少し練りながら、朝、晴くんが走っていた方向へと足を進めた。
無事に中等部に着き、中等部の門をくぐると、目の前にはちょうど大きなグラウンドが広がっており、どうやらそこでサッカー部が練習しているようだった。グラウンドを囲むフェンスには女の子たちがいて、どうやら練習を見ているようだった。時折、「キャー」と黄色い歓声が上がる。
私はフェンスから少し離れたところで、タイミングを窺うこと数分、どうやら長時間の休憩に入ったようで、監督らしき人がグラウンドから出ていき、部員がそれぞれ散り始めた。
女の子たちは今がチャンスだと言わんばかりに、差し入れを持っていっている。そんな私も今がチャンスだ。そっと、サッカー部のベンチの方へと近づき、休憩している男の子に声をかけた。
「あの…!」
「ん?」
「八代くんと話がしたいんですが、呼んでくれませんか?」
すると、その子は怪訝な目でこちらを見てきた。当たり前だ、今の私は完全に晴くんに付きまとっている過激なファンだ。しかも、高等部の制服だなんて、怖いに決まっている。
「変なものじゃなくて、八代くんの身内の者で、どうしても話したいのだけど」
「身内?八代家に女子なんていましたっけ?すみませんが、妄想ならお引き取りください」
そう言って、去ろうとする。
「ちょっと待って!」
「なんですか、もう」
どうにか、自分が身内だと証明するものはないかと考えていたときだった。騒ぎを聞きつけたのか晴くんが「どうしたのー?」と言いながらやってきた。
「いや、この人が晴八と話したいとか言ってて」
「ん?…あれ、凛ちゃん!?どうしたの?」
「いきなりごめんね、六月くんに晴くんはサッカー部だって聞いて、今日部活何時に終わる?」
「あ、本当だ、ボク言ってなかった、ごめんね、凛ちゃん、六時半には終わると思うから」
「え…晴八、彼女できたのか?」
「違うよ、ボクの妹」
「妹!?本当に身内の方!?でも、これ高等部の制服じゃ」
「年齢なんて関係ないよね?凛ちゃん」
「う…うん?」
どうやら私は晴くんに妹と認識されているらしい。
「そろそろ行かないと、本当にごめんね、凛ちゃん!」
そう言って、晴くんと部員の男の子は走り去っていった。
そう相田先生が聞いてきた。
「いえ、楽しかったです」
「それならよかったです。今からの時間は部活動が始まるのでもし時間があるなら、回って見学してみるのもおすすめですよ」
部活動見学、楽しいかもしれない。私は心ちゃんのいる手芸部が気になっていたのだ。
「わかりました、そうしてみます」
そう言って私は職員室から出て、教室に戻った。
教室に入るとそこには六月くんが机に向かって何かを書いていた。
(何を書いているのだろう)
話しかけたいが、まだそう気安く話しかけられる関係性ではない。まだ出会って一日なのだ。それでも、昨日のことは謝らないといけない。そんな思いがぐるぐると頭の中で駆け回っていた。
とりあえず、自分を落ち着かせようと、自分の席に戻り荷物をまとめながら、六月くんにかける第一声を考える。
すると、静まり返った教室で、六月くんのペン以外の音がかすかに聞こえた。
「……っ」
「…ん?」
「…だから、昨日は悪かった」
それは紛れもない六月くんの声だった。
バッと六月くんの方を向くと六月くんは顔を反対側に向けていた。髪の間から出ている耳が少し赤いような気がするのは六月くんの赤髪のせいだろうか。
「私こそ、助けてくれてありがとう」
「…別に」
「ごめんね、びっくりしすぎちゃって、巽三さんにも弁解できずに、あれから大丈夫だった?」
「大丈夫、そもそも、あんたの風呂に入った俺が悪い」
再び教室が静寂に包まれる。会話が続かない。
「何書いてるの?」
「日誌」
「今日、日直だったんだ…えーっと、あ!六月くんは何部なの?」
「柔道」
「そうなんだ、強いんだね、六月くんって」
「まだまだだ」
六月くんにとってはどうでもいい話かもしれないのに、その全てに返事をしてくれることに嬉しさを感じる。
「そういえば、晴くんって何部か知ってる?今日一緒に帰る約束をしているんだけど、部活あるのか聞きそびれちゃって」
「晴八はサッカー部、今ごろ中等部のグラウンドで練習してると思う」
「そうなんだ!ありがとう、六月くん、行ってみる!」
六月くんにお礼を言って私は教室から出た。
昼休みの経験から晴くんにも確実にファンクラブはあり、規律というものもあるのだろう。できる限り目立たないように、晴くんと話すには…と作戦を少し練りながら、朝、晴くんが走っていた方向へと足を進めた。
無事に中等部に着き、中等部の門をくぐると、目の前にはちょうど大きなグラウンドが広がっており、どうやらそこでサッカー部が練習しているようだった。グラウンドを囲むフェンスには女の子たちがいて、どうやら練習を見ているようだった。時折、「キャー」と黄色い歓声が上がる。
私はフェンスから少し離れたところで、タイミングを窺うこと数分、どうやら長時間の休憩に入ったようで、監督らしき人がグラウンドから出ていき、部員がそれぞれ散り始めた。
女の子たちは今がチャンスだと言わんばかりに、差し入れを持っていっている。そんな私も今がチャンスだ。そっと、サッカー部のベンチの方へと近づき、休憩している男の子に声をかけた。
「あの…!」
「ん?」
「八代くんと話がしたいんですが、呼んでくれませんか?」
すると、その子は怪訝な目でこちらを見てきた。当たり前だ、今の私は完全に晴くんに付きまとっている過激なファンだ。しかも、高等部の制服だなんて、怖いに決まっている。
「変なものじゃなくて、八代くんの身内の者で、どうしても話したいのだけど」
「身内?八代家に女子なんていましたっけ?すみませんが、妄想ならお引き取りください」
そう言って、去ろうとする。
「ちょっと待って!」
「なんですか、もう」
どうにか、自分が身内だと証明するものはないかと考えていたときだった。騒ぎを聞きつけたのか晴くんが「どうしたのー?」と言いながらやってきた。
「いや、この人が晴八と話したいとか言ってて」
「ん?…あれ、凛ちゃん!?どうしたの?」
「いきなりごめんね、六月くんに晴くんはサッカー部だって聞いて、今日部活何時に終わる?」
「あ、本当だ、ボク言ってなかった、ごめんね、凛ちゃん、六時半には終わると思うから」
「え…晴八、彼女できたのか?」
「違うよ、ボクの妹」
「妹!?本当に身内の方!?でも、これ高等部の制服じゃ」
「年齢なんて関係ないよね?凛ちゃん」
「う…うん?」
どうやら私は晴くんに妹と認識されているらしい。
「そろそろ行かないと、本当にごめんね、凛ちゃん!」
そう言って、晴くんと部員の男の子は走り去っていった。