恋愛は業務外につき。
感動に浸っていたら、エレベーターの方の自動ドアが開いて、生の声が聞こえた。
パッと左を見たら、テレビの画面越しじゃない、生身の人間の鳴瀬琉!
「りゅっ……鳴瀬さん! 今日からよろしくお願いします。まずは事務所で打ち合わせなので、車に乗ってください。私が運転します。朝ごはん食べましたか?」
名前の呼び方っ、気をつけないと……!
連絡事項を早口で言うと、鳴瀬さんはポカンとしたあとあはっと明るく笑った。
「杏莉ちゃん、仕事ができる新人マネさんだ。朝ごはんはちゃんと食べたよ。行こうか」
「? はい」
鳴瀬さんの後ろについて、ふたりでマンションを出た。
さっきのは、褒められた、のかな……?
*ーーー*
事務所での打ち合わせ(超大変)を終わらせたあと、車に乗り込んだ。
「鳴瀬さん、雑誌の撮影は早めに終わりそうなんですけど、昼食はどうしますか?」
「んー、なんでもいいよ。買うならコンビニ」
「好みとかあります?」
「特にー。杏莉ちゃんのオススメで」
「わかりました」
推しと、会話してる!!!
琉くんが! 車に乗ってシートベルトを!
目の保養……っ!
奇跡!! ……じゃなくて!
違う違う私、これは仕事なんだからっ。
私生活と仕事は基本的に分けて考えなきゃ。
「鳴瀬さん、そろそろスタジオ着きます。予定確認しますか」
「大丈夫、覚えてる」
忙しない心を誤魔化すために鳴瀬さんに聞いたのに、天才的発言が返ってきた。
日程把握はマネージャーの仕事なのに、鳴瀬さんは覚えてるんだ……。
そういうタレントなら、私はマネージャーとして人一倍働いて、鳴瀬さんの隣に立てるレベルにならないと!
ひとりで闘志を燃やしながら、スタジオまで車を走らせた。
*ーーー*
「おはようございます! うちのタレントがお世話になります。マネージャーの瀬戸杏莉です」