恋愛は業務外につき。
雑誌撮影のスタジオに着いて、メイクさんのところに鳴瀬さんを預けてきたあと。

現場で挨拶回りだ。

アシスタントさんやスタイリストさん。

最後に雑誌の担当者。


「お世話になっております。鳴瀬琉のマネージャーの瀬戸杏莉と申します」

「新しい担当さん? 元気な子だね。これからよろしくね」

「はい、よろしくお願いします!」


編集者の加部(かべ)さんは、三十代の爽やかな人。


「現場は今回が初めて?」

「そうですね。鳴瀬さんの現場は初めてかもしれないです」

「じゃあ、よーく見といてあげなよ。琉くん、可愛い子の前だと張り切るから」

「あはは、ありがとうございます。ちゃんと見ますね」


またぺこりと頭を下げて、少し離れたところに移動した。

ここなら鳴瀬さんも見れるし現場全体も確認できる。

それにしても、可愛い子の前だと張り切るって、鳴瀬さんも普通の男の人なんだなぁ。

私が可愛いかどうかはわかんないけど、頑張ってくれるならこっちも頑張ろう。

そう思って、撮影スペースの方に目を向ける。


「鳴瀬琉さん入りまーす!」

「お願いします。加部さんお久しぶりでーす」


メイクを終えた鳴瀬さんが、最初の服を着て入ってくる。

あの服めちゃくちゃカッコいい……!


「久しぶり。琉くんほら、撮影スペース入って」

「あ、ホントだ。……っと。雑誌の撮影久々だからなー。頑張りますね」


鳴瀬さんは、いつも通りの軽快な雰囲気。

カメラマンの人に笑顔を向けて挨拶をしている。

ふいに何か思いついたように、周りをきょろきょろし始めた。

何か探してる? まさか忘れ物とかーー。

四方八方に向けられていた視線が、私の目とばっちり合った、その瞬間。


「ーー杏莉ちゃん! 見といてよー!」

「うぇっ、私!?」


スタジオに響いた、鳴瀬さんの声!

思わず素で驚いて、思いっきり大きい声が出てしまった。

急いで口を塞いだけど、もう遅い。

スタッフさんも微笑みを浮かべ、鳴瀬さんなんか、満面の笑みだ。

諦めて口を開いた。


「見てます! 見てますから、早く終わらせて次行きますよっ!」

「りょーかーい」


軽い返事をして、鳴瀬さんは前を向いた。

さっきまで笑っていたカメラマンの人もカメラを構える。


「じゃあまず、正面から」
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