愛と優しさのちょっとした話。
【 4時間目:数学 】
「じゃあ、この答え合わせするよ。わかる人」
すっと静かに手を上げた冴斗。
「色織くん」
「3」
「正解。√9は3を表すようになります。じゃあ、これを踏まえて、教科書の練習問題15問解いて。またあとで答え合わせするからね。わからない人は周りに聞いて」
数学の鳩里(はとり)先生がタイマーをかけると同時に、教室はざわざわと騒がしくなる。
「なー、海。これってさぁ、√25の平方根は5ってこと?」
「そう」
「へぇーっ、理解!」
教科書を見ながらノートに解いていく風優。
その右斜め後ろの席の海は、もう半分まで解き終わっている。
「終わった」
海の後ろの席である冴斗の口から、小さくそうこぼれた。
「え、冴もう終わったの!? はっや。ボクも頑張る〜」
「頑張って」
後ろを向いた風優にそう言い残し、机に突っ伏して夢の中に消えていく冴斗の意識……。
「冴斗寝るのも早いよな……」
「それ、すっごいわかるかもー」
突如、冴斗の隣に出現した笑顔の鳩里先生。
「色織くんー? 点は取れてるんだから、授業態度良くないと成績は下がるんだよ〜」
「……ぅ〜……」
「あ、もう全部解けてるんでしょ? 黒板に書いてくれる?」
「はい……」
渋々起き上がって、冴斗が前に出て行った。
教壇に立った冴斗は、チョークを持って答えを書き出し始める。
白い指が書くのは、細く綺麗な字。
数字だから余計に綺麗さが目立つ。
ノートを確認して、上を向いて答えを書いて、を繰り返すたびに揺れるサラサラの黒髪。
そんでもって、それに見惚れる女子たち。
(海・風優:今絶対女子に見つめられてんだろうなぁ)
(女子たち:書記長が書く文字……!!! 感動!!)
その後、余裕で全問正解の冴斗でした。
「早かったのにねー」
「な」
「普通」
冴斗を基準にすると、多分みんなついていけない。