保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました
昼休み。保健室に行くと、須藤先輩がベッドの上で興味津々な顔をしていた。
「咲奈のクラス、文化祭は何やるの?」
「……別に、言わなくても」
「えー、教えてよ。気になるじゃん」
じっと見つめられて、結局私は白状してしまう。
「喫茶店です。私、接客係で……メイド服、着ることになりました」
「へぇ」
先輩の目が、途端にきらりと光った気がした。
「それは、見に行かなきゃな」
「み、見に来なくていいですから!」
「なんでだよ、彼女の晴れ姿だろ?」
からかうように笑う先輩に、私は思わず顔を赤くする。
その日から数日、二年生の海里先輩のクラスは、「執事喫茶」をやることになったらしいという噂が、廊下でも度々耳に入ってくるようになった。
「須藤くんが執事やるって、もう今から予約殺到してるらしいよ」
海里先輩が、執事の格好で接客……。
想像しただけで、なんだか複雑な気持ちになった。
彼と付き合っていることは、まだ田村先輩と鈴木先輩以外には話していない。
だから、こういうとき、素直に「彼女です」と主張することもできなくて。
もやもやとした気持ちを抱えたまま、私は自分のクラスの準備に追われる日々を過ごした。
◇
そして迎えた、文化祭一日目。開店から少し経った頃、私はトレーを片手に、注文の品を席へと運んでいた。
「お待たせしましたー」
そう言いながら顔を上げると、教室の入り口に見覚えのある姿があって、思わず固まる。
私服姿の海里先輩が、こっそりと中を覗き込んでいた。
「……っ、な、なんで先輩がここに」