保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました
「言ったろ、見に行くって。田村さんたちにはもうバレてるし、一般客として一杯だけお茶飲みに来たくらいなら、そんなに騒ぎにもならないだろうって思ってさ」
「見世物じゃないんですけど」
「分かってるって。ちょっとだけ、遠くから見るだけだから」
先輩はそう言うと、目立たないよう教室の隅の席にさっと座ってしまう。
心臓がドキドキしながらも、私は何とか平静を装って、他のお客さんの注文を取りに向かった。
でも、ちらちらとこちらを見てくる先輩の視線が気になって、いつもより明らかに動きがぎこちなくなる。
「咲奈ちゃん、ここ、注文いい?」
「あ、はい! ただいま伺います」
先輩の席の近くを通るたびに、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で、からかうような一言が飛んでくる。
「似合ってるじゃん、咲奈」
「……っ、静かにしててください」
顔が赤くなるのを感じながら、私は先輩から視線を逸らして、足早にその場を離れた。
結局、先輩は一杯だけ紅茶を頼んで、こっそり飲み干すと、何事もなかったかのように教室を出ていった。
去り際、私にだけ見えるように、小さく手を振って。
もう、心臓に悪い。
そう思いながらも、なんだか胸の奥がくすぐったくて、しばらく顔のにやけが止まらなかった。