保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました
一日目の営業を終えたあと、片付けを済ませた私は、梨沙子たちに誘われて、少しだけ他のクラスの模擬店を覗いて回ることにした。
「あそこの輪投げ、景品がお菓子の詰め合わせなんだって」
「行ってみようよ」
友人たちとはしゃぎながら、お化け屋敷にキャーキャー言いつつ入ったり、隣のクラスのたい焼き屋台で小腹を満たしたり。
「咲奈、さっきのメイド服姿、めちゃくちゃ可愛かったよ」
「あ、ありがとう。恥ずかしかったけどね」
「見た見た! 男子たちがそわそわしてたの、気づいてなかったでしょ」
からかうように言われて、私は思わず苦笑いする。
こんな何気ない時間も、文化祭ならではの楽しさだった。
須藤先輩とのことは、まだ誰にも話せていないけれど。
こうして友人たちと過ごす時間の温かさも、私にとってはやっぱり、大切なものだった。
◇
文化祭二日目の午前。自分のクラスの喫茶店の当番が一段落した頃、少し時間が空いたので、私はこっそり二年生の教室を覗きに行くことにした。
執事喫茶と書かれた看板の前には、長い行列ができている。
窓越しにそっと中を覗くと、黒い執事服に身を包んだ海里先輩が、涼しい顔でお客さんの案内をしていた。
「お嬢様、こちらのお席へどうぞ」
芝居がかった仕草で椅子を引き、優雅に一礼する先輩。
「きゃー、海里くん素敵ー!」
「写真撮ってもいいですか!?」
黄色い声援が、廊下にまで響いてくる。
海里先輩は、それに応えるように甘く微笑みながら、女子生徒たちのカメラに向かってポーズを決めていた。