保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました

文化祭二日目の夕方。後夜祭の準備で校内がざわつく中、私はスマホにメッセージが届いていることに気づいた。

差出人は、海里先輩。

『屋上、来れる? 誰もいない時間だから』

指定されたのは、普段は施錠されているはずの屋上へと続く階段だった。

見張りの先生の目を盗むようにして辿り着くと、鍵が開いた扉の前で、私服に着替えた海里先輩が待っていた。

「先輩。その鍵、どうしたんですか」

「ああ、これ? 用務員の田中さんに、貸してもらったんだ」

「え、そんなことしてもらえるんですか」

「前に、田中さんが落とした鍵束をたまたま拾って届けたことがあってさ。それ以来、なんとなく顔を覚えてもらっててね。頼めば、大体貸してくれるんだよね」

「……先輩、そういうところ地味に人たらしですよね」

「褒めてる?」

「微妙なところです」

悪びれもせず笑う先輩に、私は思わず苦笑いがこぼれる。

「執事服、もう脱いだんですね」

「あれ、一日中はさすがにきついって。咲奈のメイド服も、見に行けて良かったよ」

「……っ、あれは本当に不意打ちでした」

「可愛かったから、つい」

さらっと言われた一言に、頬が熱くなる。

屋上の扉を開けると、夕暮れの風がふわりと吹き抜けた。

グラウンドのほうから、後夜祭の準備をする生徒たちの声が、遠く聞こえてくる。

「さっきの執事のとき、ムカついたでしょ」

「……別に」

「嘘つけ。すごい顔で、こっち睨んでたじゃん」
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