保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました

後夜祭が終わり、すっかり日が落ちた帰り道。

人通りの少ない道を選びながら、先輩がそっと私の手を握った。

「今日、疲れたでしょ。メイド服で一日中接客なんて」

「先輩こそ、執事服で愛想振りまいてたじゃないですか」

「あれはあれで、結構体力使うんだよ」

繋いだ手のひらから伝わる体温に、自然と歩幅が合っていく。

「なぁ、咲奈」

「はい?」

「文化祭が終わったら、また日常に戻るけどさ。こういう、二人だけの時間、これからも大事にしような」

「はい。……あの、海里先輩」

「なに?」

「私も、屋上とは言わないですけど。何か、先輩だけに見せられるもの、探してみます」

自分でも、驚くくらい素直な言葉だった。

「……咲奈、それ、今言う?」

先輩が、珍しく照れたように視線を逸らす。

「あ、耳まで真っ赤ですよ」

「赤くねーし。夜風が冷たいだけ」

「ふふ、絶対嘘です。こっち見てくれないですし」

そんな他愛もないやり取りをしながら、私たちは笑い合う。

「そうだ。今度の休み、どこか行かない? 咲奈と、ちゃんとデートらしいことしたくてさ」

「デート、ですか?」

「うん。人目を気にしなくていい、ちょっと遠くの場所とかで」

「……楽しみにしてます」

素直にそう答えると、先輩が嬉しそうに目を細めた。

繋いでいないほうの手が、ふいに私の頬へと伸びてくる。

指先が、そっと頬に触れた。
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