ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
(最近はヨーロッパからのお客様も増えてきたから、フランス語やドイツ語、スペイン語も勉強したいな……って、欲張ってもそんなに覚えられないか)

二時間勉強してお昼になった。

お腹が空いて集中力が切れたのでテキストをしまう。

大盛り冷凍チャーハンを温めて食べ、そのあとは食材の買い出しに出かける。

山も街路樹もすっかり紅葉し、落葉も始まっている。

足元に絨毯のように広がるイチョウの葉を踏みながら、町に一軒しかないスーパーマーケットに向かった。

十分ほど歩き、大きくはない平屋で年季の入った建物の前に着いた。

入口には焼き芋とおでんの絵が描かれた旗が立っている。

(寒くなってきたし、おでんもいいね。譲は食べたことある?)

作ってあげたいと思ったが、今夜は帰らないのを思い出してまた寂しくなった。

夕食候補からおでんは外し自動ドアを潜ろうとすると、顔見知りが出てきて鉢合わせた。

「こんにちは」

「杏野さん、こんにちは」

近所に住む同年代の女性で、二歳の元気な男の子の母親だ。

左肩に買い物袋をかけ、右手に男の子の手を繋いでいた。

「寒くなってきましたね」

「そうですね。おでんの旗を見て食べたくなっちゃいました」

世間話を少しして「それじゃ」と歩き出そうとした彼女だったが、前に進めずにいる。

男の子が小さな手でおでんの旗を掴み、「もってきゅ」と言って離さないのだ。
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