ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
会釈して歩き出した男性といったん別れたが、気になって何度も振り返り目で追っていた。

(無事にたどり着けるのかな)

そう思った矢先に別の道に曲がろうとしている後姿が見え、慌てて走って追いかけた。

「道をお間違えですよ。そっちは山の方に上る道です」

「おや、先ほどの方。年を取ると地図も読めなくなって嫌ですな」

「あの、やっぱりタクシーの方がいいんじゃないでしょうか?」

「いえ、タクシーは絶対に乗りません」

(タクシー嫌いなの……?)

それならどうぞ頑張ってひとりで迷いながら歩いてくださいとは言えない性分である。

こうなれば自分が旅館まで送り届けるしかないと腹をくくった。

(今日が休日でよかった。通勤途中なら送っていけないもの)

「旅館までご案内します。お荷物は私が持ちますね」

「いえいえ、重たいから自分で持ちます」

「私、力持ちなんで大丈夫ですよ。ご遠慮なく」

「そうですか。ではすみませんがお願いします」

(よいしょ。思ったより重いけどこのくらいなら大丈夫。それにしてもこれで三件目。今日は誰かの荷物を運ぶ日みたい)

持ち手が肩に軽く食い込む旅行鞄を預かり、男性のゆっくりした歩速に合わせて旅館街を目指した。

湖沿いの道に出ると観光地らしい景色が広がり、男性が目を細めている。

「山の紅葉と湖。実に美しいですな」

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