ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「そうですね。この町が誇れる景観だと思ってます」

「妻がここに来たいと言ってたんですよ」

(えっ……?)

男性が懐から出したのは優しそうな老婦人の写真だ。

「ほら、見えるか? きれいだろ。生きてるうちに一緒に来れたらよかったな」

亡くなった妻のための旅行だと気づき、鈴花は胸打たれた。

旅行鞄を担ぐ手に力を込め、笑顔を向けた。

「奥様もきっと、喜んでいらっしゃると思います。ご予約の旅館も評判がいいので、ご満足いただけると思います」

「そうですか。楽しみですな」

旅行が趣味のご夫婦だったそうでこれまでの旅行先での思い出を聞きながら歩き、三十分かけて旅館に到着した。

「いやぁ、助かりました。ご親切にありがとうございました」

「奥様との楽しい思い出話を聞かせてくださって、私の方こそありがとうございます。中まで旅行鞄を運びますね」

二キロも歩いて疲れただろうと思ったので、フロントまで荷物を持ってついていった。

これでお役御免だと思ったが――。

「予約に名前がない? おかしいな。この宿じゃなかったかな?」

(えっ……違う旅館に案内しちゃった?)

最初に『湖畔荘』と言われたが、その名の通りの旅館がないので『湖畔楼温泉』かと聞いた。『そうです』と言われたので連れてきたのだが、間違っていたようだ。

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