ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「疲れているんでしょ? 譲は朝早かったもの。家に帰って休んで。体、壊しちゃうよ」

体調への優しい気遣いも帰宅を促す理由だったようで胸が温まる。

「鈴花……!」

抱きしめたくて両腕を広げたが、それには真顔で首を横に振られてしまった。

「そういうのは、私が家に帰ってからに――」

途中で言葉を切った彼女が慌てて訂正する。

「今のナシ」

「訂正は受け付けない。楽しみに家で待ってる」

恥ずかしそうにそっぽを向いた鈴花が愛しい。

彼女の頭に手を置いて「そんなに照れるなよ」というと、微かに頷いてくれた。

名残惜しいが、これ以上は本当に迷惑がられそうな気がするので引き上げる。

(新しい思い出を作っていけるのが嬉しいな)

再会するまでは過去の思い出を脳内に再生させて鈴花に会える日を夢見ていただけだったのに、いつでも話ができる幸せを噛みしめる。

ホテルを出て車に戻り、エンジンをかけながら子供の頃を思い出す――。

(日本か。嫌だな)

日本の公立小学校に転入すると父親に言われた時の感想がそれだった。

父は個人で貿易関係の仕事をしており、母はフォトグラファーだ。

イギリスのロンドンで生まれて自宅もそこにあるが、物心ついた頃から一年の半分ほどを様々な国で暮らしていた。

日本に三か月ほど移り住むことになったのは十歳の時だ。

嫌だと感じるもっとも大きな理由は言葉の壁にある。
< 120 / 242 >

この作品をシェア

pagetop