ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
隆矢はふてくされた顔をしている。

「人気のない場所で俺を消そうとしているんじゃないよな」

「譲がそんなことするわけないでしょ。冗談でも言わないで」

すぐに鈴花がかばうと舌打ちされたが、それ以上は言ってこなかった。

すっかり日が暮れて湖は黒く染まっている。

対岸の温泉旅館街の明かりはきれいだが、都会の夜景に比べると圧倒的に物足りない。

(夜は景観を楽しめない町なのに)

感想もなにもないまま「行こうか」と海崎が言ってラウンジバーを出た。

「なにしに来たんだよ」

隆矢のぶっきらぼうな呟きに心の中で頷いてエレベーターに戻る。

今度は二階で降りて廊下を進み、葵の間に入った。

(あれ? 電気がつけっぱなし)

使っていない部屋なのにと不思議に思いながら靴を脱ぎ、襖を開けて畳に上がった。

鈴花と海崎が並んで座り、座卓の向かいに隆矢があぐらを組んでいる。

広さは十二畳ほどだが、隆矢の後ろの襖を全開にすると隣の藤の間と合わせて二十八畳の大広間になる。

「さて、まずは事実確認からしようか」

隆矢が鈴花と交際していた期間、別れた日にちと経緯を海崎が淡々と述べる。

(改めて振り返ると私、本当にひどい扱いをされてた。でも心に傷は残っていないし、なんなら忘れてたくらいどうでもよくなってた。譲との新婚生活が幸せすぎるおかげで)

だからもう関わらないでほしいと切に願う。

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