ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
神山は他の職員にも声をかけにいったようで、鈴花はひとりでカウンターの奥の扉からバックヤードに出た。

事務室から出てくる真紀の姿が見えたので、小走りで隣に並ぶ。

「真紀さんも会議室に呼ばれたんですか?」

「そう。新オーナー、こっちに来るのは来週だって聞いてたのに、早かったね」

『ザ・リンドン・ハートリー』と名のつく日本のホテルは、東京と京都にもある。

母体はイギリスにある由緒正しい名門ホテルなのだが、日本にある三つのホテルは経営権が独立しておりオーナーは日本人だ。

そのオーナーの交代が二週間ほど前にあった。

理由は聞いていないが、経営が危ういなどの不穏な噂はないのでスタッフはあまり気にしていない。

新オーナーは東京と京都を回ってから最後にこの田舎町に来ると聞いていたので、真紀が『早かった』と言ったのはそういう意味だ。

「どんな方なのか聞いてます?」

「かなり若いそうだよ。イギリス育ちだって」

「あれ? 日本人じゃないんですか?」

「神山さんがクオーターって言ってた。国籍は日本だから、日本人だね」

「そうなんですか」

歩きながら色々と聞いたが、興味は薄い。

東京に住んでいた前オーナーがこっちに顔を出すのは年に一、二回だったから、新オーナーとも関りは少ないだろう。

(これまで通りに働けるなら、オーナーは誰でもいい)

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