ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
一瞬、自分に向けて微笑んでくれたと勘違いしてしまったが、ここにいる全員に向けての『よろしく』という意味の笑顔だろう。

(オーナーが誰であろうと関係ない。私は好きな仕事を一生懸命に頑張るだけだから)

制服の上からお腹の贅肉をつまみ、勘違いは二度としないと自分を戒めた。



フロントスタッフは三交代制のシフトで、早番の仕事は十六時までだ。

遅番の同僚に引継ぎをしてからバックヤードに出て、ロッカールームへ向かって歩く。

バックヤードは初めての人だと迷うほどに広く、お客様がいる館内に繋がるドアがあちこちにある。

そのひとつが開いて、海崎オーナーが現れた。

心構えのない中での遭遇に肩をビクつかせてしまい、慌てて一礼する。

「失礼いたしました」

昨日のことも謝った方がいいだろう。

助け船を出してくれた彼にお礼もせず、引き留められても逃げるように店を出てしまったのだから。

しかし後ろから誰かの靴音が聞こえてきたので、言い出せなくなる。

どうしようかと思っていると海崎の方から声をかけてくれた。

「昨日はどうも。今、仕事を上がったんだよね? 言いそびれた話があるんだが、執務室まで来てくれないか?」

「わかりました」

あとについて歩きながら、なんの話だろうと考える。

(口止めかも)

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