ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
昨日、思わせぶりな助け方をしたから、おかしな噂を流されると困ると心配しているのかもしれない。

スタイルのいい後姿を見ながらそんなことを考えているうちに、事務室の斜め向かいにあるオーナー室についた。

専門学校を卒業してすぐこのホテルに就職し、勤めて八年目になるが、オーナー室に入るのは初めてだった。

カードキーで解錠した彼が「どうぞ」と通してくれて、一礼してから足を踏み入れる。

「失礼します」

おそらく前オーナーの趣味で整えられた室内は、絨毯敷きの床にドレープのついたカーテン、執務机と応接テーブルは木目でエレガントな印象だ。

机上にもテーブルにも書類やファイルが山のように積まれていて、さっきまで読んでいた様子に見えた。

(今の経営状況だけじゃなくて古い記録にも目を通そうとしてるのかな。仕事熱心なんだ)

勤勉さを垣間見て、ホテル経営が初めてでも安心してついていける気がした。

「散らかっていてすまない。ソファにかけてくれ」

「はい」

ふたり掛けの黒い革張りのソファに座ると、コーヒーマシンで淹れたカップのコーヒーを出してくれた。

「すみません。ありがとうございます」

恐縮しつつもシュガーとミルクを入れてかき混ぜていると、隣の座面が沈んで驚いた。

向かいにもソファがあるのに、なぜ隣に座られたのかがわからない。

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