ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「それでしたら鹿肉はどうでしょう? 熊に比べると抵抗感が低いと思いますし、味のクセもそんなにないです。流通量も比較的豊富です」

「貴重な意見をありがとう」

話題が職場に移ってホッとした。

口説かれ慣れていないので、受け答えに困るからだ。

そのあとはジビエ料理を楽しみながら、落ち着いて会話を弾ませることができた。



二時間半かけてお腹を満たし、満腹の幸せ気分で帰路に着く。

送ると言ってもらえたので一緒にタクシーに乗り、鈴花のひとり暮らしのアパートに向かう。

辺りはすっかり夜の様相で、空には満月に近い月と星が輝いている。

街灯がまばらな山道をくねくねと下り、月を映す湖に沿うように走って住宅地に入る。

通っていた小学校の校庭が見えた。

小さな町だが幼稚園から高校まではひとつずつあり、それ以上の進学となると実家を離れて大きな街へ出なければならない。

鈴花も札幌でホテルマン養成の専門学校に通っていた。

都会より田舎の方が自分に合うと思って就職で戻ってきたけれど、入れ替わるように父の栄転で家族は札幌に行ってしまい、ひとり暮らしは八年目だ。

「小学校か。懐かしいな」

車窓を眺めている海崎がしみじみと言った。

(懐かしい?)

一瞬、ここに通っていたのかと驚いたが、それはない。

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