ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
(私が預からせてもらおう。たぶん人違いだから、そこをはっきりさせないと)

彼が過去に結婚の約束をしたのがもし自分だったら、今頃運命の恋を純粋に喜んでいたのかもしれない。

人違いだとはっきりしたあとは、彼はもう見向きもしてくれないだろう。

そう思うと、少し残念な気もした。



翌日は遅番で十三時からの仕事だが、海崎と話したいので一時間早く自宅を出た。

(婚姻届、提出は待ってもらわないと)

ホテルに着いて裏玄関から入り、バックヤードの廊下を進む。

「あれ? 鈴花どうした?」

「遅番なのに随分早いね」

これからランチに向かおうとしている真紀と夢美にバッタリ会った。

「ちょっと気になることがあって早めに来たんです。それじゃ急ぐから、またあとで」

深掘りされないように足を止めず、ロッカールームに駆け込む。

昨夜、夢美から電話がかかってきて海崎のことを話そうかと思ったが、うまく説明できる気がしなくて言えなかった。

(ふたりにはいつでも話せるし、海崎オーナーを優先しよう)

ロッカールームには職員がひとりいて、ロッカーについている小さな鏡を使いメイクをしていた。

「おつかれさまです」

「おつかれさま」

きれいに巻いた長い髪をひとつに束ね、スレンダーな体形の彼女はラウンジカフェ勤務の怜奈だ。

(どうしてこの時間にここにいるんだろう)

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