ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
さらには左手を握られ、顔に熱が集中した。

「近いうちにエンゲージとマリッジ、指輪をふたつ買いにいこう。ブライダルの希望は? 札幌で指輪を見たあとに参考までに結婚式場の見学に行かないか? 新居の相談もしないといけない。とりあえず、俺の家に引っ越してくる?」

(食べてる場合じゃなかった。しっかり話さないと)

「あの、結婚は少し待ってもらえませんか? 昨日の婚姻届もいったん預からせてください」

「なぜ?」

嬉しそうだった彼の眉間に皺が寄る。

がっかりさせると思うと目が泳ぎ、それでも言わなければと気持ちを話す。

「婚姻届にサインしたのは、勢いもありまして。あの、結婚したくないわけじゃないんです。前向きに考えていますけど、結婚までの交際期間が欲しいんです」

お互いの両親への挨拶が先だとも思うし、なにより一度食事をしただけではまだ彼の人となりを理解したとは言えない。

(こんな私が言うのはおこがましいけど)

「まずは清らかなお付き合いからにさせてください。海崎オーナーが過去に結婚の約束をした人が、もし私じゃなかったらという心配もあります。私は少しも覚えがありませんので。結婚する前にはっきりさせないと。どうかお願いします」

ベーグルサンドを置いて、彼に頭を下げる。

唸るように嘆息した彼は、言葉を探しているように黙る。

< 42 / 242 >

この作品をシェア

pagetop