ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「ただの隣人です」

「隣が男だと思わなかった。逆側は?」

「高齢女性です。あの、山田くんとは別に友達ってわけじゃないですよ。カレーをお裾分けして、返してくれる容器の中にお菓子を入れてくれる、それくらいの関係です」

ごく普通のご近所付き合いを説明したつもりなのに、なぜか海崎が不満顔をする。

「鈴花の手料理をなぜただの隣人が。夫の俺は一度も食べたことがないのに……」

「こ、今度作ります。大したものは作れませんけど、ぜひ食べてください」

「部屋に上がらせてくれるのか?」

「お休みの日の昼間でしたら、いつでもどうぞ」

彼の眉間の皺が解けてホッとする。

「楽しみだ」

心から喜んでいそうな笑顔を向けられ、心臓が大きく波打った。

(そんなに私が好きなんだ……って、得意げになに言ってるの!?)

たちまち心の中が忙しくなり、熱い顔で頭を下げる。

「送ってくださってありがとうございました」

「俺が送りたかっただけだから。それじゃまた明日、ホテルで」

彼の爪先が車の方へ向く。

帰るのだろうと思ったが、名残惜しいのかなかなか歩き出さない。

「海崎オーナー?」

「ふたりきりの時は譲と呼んでほしい。夫婦なんだから敬語もいらない」

(そうだよね。そうなんだけど……)

夫婦より、雇用主と従業員の関係性の方を強く感じてしまう。

それでも彼の望みに応えたいと口を開く。

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