ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「譲さん」

「さん、も取ってくれ」

「じょ、譲。ちょっと恥ずかしいね」

照れ隠しでへへッと笑ってみせると、彼の顔つきが変わった。

心なしか目が潤んで色っぽさが増したように見える。

(えっ、なに?)

思わず鼓動を高まらせると熱くなった頬に彼の片手が触れ、驚いて体を硬くした。

「キスもまだダメ?」

(キス!?)

「ダ、ダメだよ」

「わかった。おやすみ、鈴花」

車へと歩き出した広い背中がしょんぼりしているように見え、心が揺れる。

(もったいぶってるわけじゃないよ。だって聞くんだもの。恥ずかしくていいって言えない)

彼の車がゆっくりと動き出す。

テールランプが遠ざかるのを見ていると、寂しくなる。

(もう少し、話したかったな)

こういう気持ちを積み重ねていつか恋になり結婚という流れが普通だと思っていたが、結婚が先になってしまった。

(もう人妻なんだ。全然実感が湧かないし、譲って名前を呼ぶだけで照れる)

誰も見られていないのに恥ずかしくて、急いで自宅の鍵を開けた。




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