ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
嫉妬深さは愛の証明
婚姻届が出された翌週、制服姿でカウンターに立つ鈴花の前には列ができている。

時刻は九時半で、チェックアウトのピークを迎えていた。

「お待たせいたしました。ただ今ご精算を確認いたします」

「杏野さん、すみません。兵庫までスーツケースを送るといくらかかるかご質問されたのですが」

鈴花の隣で同じ業務をしているフロントスタッフは、加藤という二十二歳の男性だ。

入社二年目で、ベルボーイからフロント業務に移ってまだひと月の新米である。

研修が終わったのでカウンターに立ってもらったが、マニュアルにはない客からの要望をどうすればいいかと鈴花に聞くので、それに答えているとどうしても遅くなる。

時間がかかりすぎていてまずいと焦っていると、支配人の神山が手伝いに入ってくれた。

「気づくのが遅れてすまない。こっちで教えるから杏野さんはスピード上げて」

「はい」

それでもチェックアウト待ちの列はなかなか解消されない。

ほぼ鈴花の一馬力という理由の他に、予期せぬ団体客がいるせいだ。

予約時は個別の宿泊だった三十組ほどが、なぜかこのあと同じ観光バスに乗り合わせてツアーに出かけるそうで、チェックアウトの時間が被っている。

(かなりお待たせしてる。どうしよう)

宿泊客のこのあとの予定に影響が出るのを心配していると、やはりというべきか列の中ほどからお叱りの声が上がった。

「どうなっているんだ。こっちは急いでいるのに全然進まないじゃないか」

怒っている男性客に対応したくても、神山がカウンターを離れるとまた鈴花が教える係もやらなければならない。

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