ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
鈴花を押しのけて海崎の隣に立ちたかったようだが、体重差で彼女の方が弾かれている。

尻もちをつきそうになったところを、海崎が腕を掴んで支えてあげた。

「キャッ、すみません。杏野さんに吹っ飛ばされるところでした。助けてくださってありがとうございます」

(えっ、私が悪いの?)

怜奈は上目遣いで微笑みかけているが、海崎の眼差しは冷たい。

「失礼な言い方はやめるんだ。ぶつかったことも含め、杏野さんに謝るべきだ」

「そ、そうですね。杏野さん、すみませんでした。悪気はないんです。お役に立とうと思って走ってきたので、止まれなかったんです」

ラウンジカフェはロビーの正面玄関横にあり、パーティションと観葉植物で間仕切られている。

ここから見える限りでは利用客が少ないので、勝手に持ち場を離れたのだろうか。

(それは、ダメでしょ)

海崎も眉間に皺を寄せていて、鈴花と同じ考えのようだ。

「ロビーを走らないのは基本だ。今後、気をつけてください。それと気遣いはありがたいが、君ではフロントを手伝えない。今すぐ持ち場に戻り、責任を持って自分の仕事を全うしてください」

「はい。これからも一生懸命に頑張ります」

(注意が伝わってない?)

怜奈の目がハートになっているので、激励されたと都合のいいように解釈したのかもしれない。

ラウンジカフェに戻る華奢な後姿が嬉しそうに見えた。

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