ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
ダンボール箱を抱えて部屋から出てきた山田が、鈴花を見て近づいてきた。

「杏野さん、夜勤明けっすか? 俺、引っ越すことになって。直接挨拶できてよかったです」

「随分急だね。それとも前から予定してたの?」

「つい最近っす。大家さん、代わったじゃないですか」

大家が代わるというお知らせがポストに届いていた。

同封されていた契約書にサインして返送したのは先週だ。

家賃や更新時期など今までと変わらないので引っ越す住人はいないと思っていたのだが。

「俺の部屋、リフォーム工事したいとかで、出てほしいと言われたんです」

「私に打診はなかったけど」

ひと部屋だけのリフォームだろうか。

新しい大家が知人に貸すつもりなのかもしれないと推測した。

「マジかって感じだったけど、迷惑料払うって言われて。職場近くにいい条件の新居も探してくれたんで、逆にありがたいっす」

山田がホクホク顔をしているので、迷惑料とやらが高額だったのかもしれない。

「杏野さんにはお世話になりました」

「こちらこそ、今までありがとう。元気でね。狭い町だからコンビニとかでバッタリ会いそうな気もするけどね」

寂しさのない別れの挨拶を済ませ、自宅に入る。

お腹が空いているでまずは朝食だ。

キッチンに立って四枚切りの食パン二枚をトーストし、バターを塗った。

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