ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「食べません。コーヒーも結構です」

キッチンへ向かおうとしていた彼の足が止まる。

こちらに戻ってきた彼とソファの横で向かい合った。

「怒ってる?」

「怒ってるよ。なにも教えてくれずに騙し討ちみたいに引っ越してきたんだもの。新しい大家さんって、譲なんでしょ?」

声がよく似ていた不動産屋の男性は、彼本人だったのではないかと疑っている。

眉間に力を入れて見つめると、彼の眉尻が下がった。

「そう。マルケイ不動産は俺の個人会社だ」

「山田くんを引っ越しさせてまで隣に住みたいなんて。他人に迷惑かけないでよ」

「ごめん。鈴花の手作りカレーを、隣人が食べているのかと思うと許せなかったんだ。俺はまだ食べていないのに」

婚姻届を出してからひと月経っている。

カレーを作ったら海崎を招待しようと思っていたが、タイミングが合わずにまだ振る舞っていない。

(というか、そんな約束をしたのをすっかり忘れてた。譲はずっと楽しみにしていたの? 焼きもちを焼かせた私も悪かった)

怒りのボルテージが少し下がる。

「引っ越してもらった山田さんには、申し訳ないとは思っている。お詫びは喜んで受け取ってくれたんだが」

ホクホク顔で迷惑料をもらった話をしていた山田を思い出すと、また少し怒りが減った。

(でもまだ許してはダメ。室内ドアはあり得ないもの)

ドアを指さして問いただす。

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