ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
(んっ、大成功。蕎麦つゆとカレーの割合が完璧だ)

しっかり焼き目をつけた長ねぎと鶏肉の香ばしさがたまらない。

「譲はどう――えっ?」

右手に箸、左手で顔を覆った彼がじっと動かない。

「口に合わなかった?」

恐る恐る声をかけると、顔から手を離した彼の目が少し潤んでいた。

「感動で泣きそうになった。こんなに美味しい蕎麦は初めてだ」

「そんなに? お店のよりも?」

「今までカレー南蛮蕎麦を食べたことはない」

「そういうことね」と笑って受け流したが、鼓動は正直に高まっている。

(簡単な料理なのに、こんなに美味しそうに食べてくれるなんて。私の手料理だから感動してくれたんだよね?)

湯気の向こうでは、目の覚めるようなイケメンが味わうように蕎麦を口に運んでいる。

彼とレストランで食事をした際はまるで自分が恋愛ドラマに入り込んだ気分で夢心地だったが、今は現実感を持ってこの状況を楽しめている。

庶民的で日常を感じさせるカレーの香りのせいかもしれない。

突然、隣に引っ越してこられて驚いたが、そのおかげで海崎を身近に感じられる日は遠くない気がした。



携帯のアラーム音が聞こえ、鈴花は目を開けた。

なるべく部屋を広く使いたいので、ベッドではなく敷布団で寝ている。

(起きなきゃ)

差し込む朝日に小さなため息をついた。

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