ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「海崎オーナーが呼んでる。戻ってきたらでいいと言われたんだけど今、手が空いてるから客室点検を私が代わろうと思って」

「わかりました。お願いします」

海崎は午前中から温泉旅館組合との会議に出かけていたはずである。

昼食付きの会議でまだ終わらないと思っていたが、帰りがやけに早い。

(なにかあった?)

源泉使用量の確認やルールの見直しなどを目的とした定例会議で、これまでは支配人の神山か事務長が出席していた。

前オーナーは一度出席したきりで、嫌な仕事はしたくない様子だった。

なぜ嫌なのかというと、徒党を組んだ温泉旅館側に色々と嫌味を言われるからだ。

同じ源泉を利用してこの地域を盛り上げる仲間のはずなのに、温泉旅館側にするとリゾートホテルはお高く止まって相容れない関係に思えるらしい。

階段を急いで五階分駆け下りて、息を切らしてオーナー室の前に立った。

きっと温泉旅館側にやり込められて傷ついたのではないかと彼の胸の内を推測し、ドアをノックした。

「どうぞ」

「杏野です。失礼します」

心配しながら入室したが、執務机でパソコンに向かっている海崎は微笑んでいる。

「呼び出してすまない」

「ううん、それはいいんだけど……」

(深刻そうな雰囲気はないみたい)

「温泉旅館組合と会議があったんだよね?」

「ああ。さっき戻ったところだ。それで、これを頼もうと思って」

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