ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
オーナー室の前をうろうろしたり、海崎の姿を見かけると持ち場を離れて話しかけようとするからだ。

ロッカールームで『じゃあどうやってお近づきになればいいのよ』と仲のいいスタッフに愚痴をこぼしていた話は夢美から聞いた。

(頑張ってもその恋は実らないって教えてあげた方が親切……? 無理だよ。理由が説明できないもの。オーナー室への呼び出しひとつで詰め寄られて、結婚してるのがバレたらどうなっちゃうんだろう。怖い)

「私、仕事に戻ってもいいですか?」

恐る恐る聞くと、怜奈がしぶしぶ給湯室のドアを開けた。

「言っておくけど、私でも素っ気なくされるのに杏野さんが狙っても無理だからね」

牽制に返事ができず、曖昧に笑ってやり過ごす。

温泉饅頭をしまいにロッカールームに向かいながら、呼び出しは控えてもらえるよう海崎にお願いしないとと考えていた。



十六時にフロントの仕事を終えた鈴花は紙袋を手に会議室に入った。

長机を向かい合わせにふたつ繋げ、椅子を四脚出してある。

そこに座っているのは真紀と夢美で、鈴花のあとからフロントスタッフの後輩、加藤も来た。

温泉饅頭選びの件で、鈴花がこの三人に声をかけたのだ。

「加藤くん、急に頼んでごめんね。このあと予定なかった?」

「友達と約束してるんですけど、まだ時間に余裕があるので大丈夫です。逆に小腹を満たして行けそうで、ありがとうございます」
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