ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「夢美と真紀さんは、時間大丈夫ですか?」
「一時間もらってるから平気」
温泉饅頭の箱は八つある。
地元の和菓子屋が作っているものが二箱で、あとは道内の菓子メーカーの工場で製造されたものだ。
夢美が淹れてくれた緑茶を飲みながら、四人で食べ比べをする。
「黒糖が入った皮がおいしい。私はこれが好きかな」
「賞味期限は工場生産の方が圧倒的に長いみたい」
「カスタードあん、うまいですね。アリだと思います」
「二種類って言われてるから、変わり種は今回やめておこうか」
(ずっと選んでたい。おいしくて楽しい仕事をくれた譲にお礼を言わないと)
甘味好きとしては妥協できず、三十分が経過した。
「僕的にはこれとこれです。すみません、もう行かないといけないんで、お先に失礼していいですか?」
友人から連絡が来たのか携帯画面を見ながら加藤が席を立った。
「いいよ。付き合ってくれてありがとう。加藤くんの意見は譲にも――」
(しまった!)
うっかり海崎を下の名前で呼んでしまった。
ごまかしも思いつけずに慌てていたが、加藤は鞄を手にさっさと会議室を出ていった。
「気づいてないみたい。よかった」
海崎との夫婦関係を知っているメンバーだけになり、ホッと息をつく。
「口を滑らせかけたね。危ないな」
真紀に笑われ、夢美には口を尖らせて言われる。
「全然甘くなくて物足りない」