ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「おつかれさま。かしこまらないで気楽にして。スタッフの皆さんと親睦を深めたいと思っていたんだ。遠慮なく参加させてもらうよ」

笑顔の海崎だが、その目が笑っていない気がした。

男性がいるとは聞いていないと言いたげな視線を向けられ、鈴花は冷や汗をかく。

「加藤くん、こっちにずれてもらえる?」

真紀が気をきかせて加藤を移動させ、鈴花の隣に海崎のグラスや取り皿を置いてくれた。

それで少し彼の笑みが柔らかくなる。

(私は緊張するけど……)

自分たちの関係を加藤に気づかれないか不安だ。

「杏野さん、これをどうぞ。みんなで飲もうと思って持ってきた」

渡された紙袋には赤と白のワインが一本ずつ入っている。

(これって先週、譲がインターネット注文してた高級ワインだ)

彼はワイン好きなようで、鈴花の庶民的な手料理にも『これが合いそうだ』とワインボトルを開栓する。

届くのを楽しみにしていた高級ワインを、みんなで飲んでいいのかという気持ちになる。

「ありがとうございます」

ためらいつつも受け取ると、真紀がオープナーを出してきた。

「一本、開けさせてもらいますね。夢美は下戸で加藤くんは今日は飲めないんですけど、三人で楽しみましょう」

海崎の視線が加藤に向いた。

「これから夜勤?」

「はい。もう少ししたらここを出ます」

< 93 / 242 >

この作品をシェア

pagetop