今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末
ビクトリアはびくりと肩を震わせる。
「……すみません」
クラウスがすぐに謝罪する。
ビクトリアにはますます彼の考えていることがわからなくなった。どんなに好きだと伝えても決して靡かなかったのに、いざビクトリアが他の男に目を向けたら急にこんな態度をとるなんて。
「……クラウス様。私、あなた様のおっしゃる通りにしましたわ」
「……」
「あの日、二度とあのような真似をしてはいけないとおっしゃいましたでしょう?」
ビクトリアは努めて明るく微笑んだ。
「私、ちゃんと別の方を好きになりますわ」
その瞬間。
肩を掴んでいるクラウスの手に、ぐっと力がこもる。
「……それは困ります」
「はい?」
クラウスは真剣な顔でビクトリアを見つめている。
(一体、なんなの?)
ビクトリアの胸に、ふつふつと怒りが湧く。
どれだけ好きだと伝えても、いつも表情ひとつ変えずに受け流していたくせに。
ビクトリアが既成事実を作ろうと馬乗りになったときでさえ、彼は平静さを失わなかった。