今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末
「無理です。忘れられません」

 クラウスは大きく息を吐く。

「……あのとき、私がどれだけ必死だったと思っているんです」
「必死?」
「理性が断ち切れそうでした」
「…………」

 ビクトリアは瞬きをした。

(聞き間違いかしら? 理性? クラウス様の理性?)

「……まさか、怒りのあまり私を手にかけようと⁉」

 ビクトリアはハッとして青くなる。

「どうしてそうなるのですか! あなたにあんなことをされて、喜ばない男はいません」
「だ、だって……!」

 いよいよビクトリアは動揺した。
 もしや、既成事実を作ろう作戦は少しは効いていたのだろうか。

 そんな素振りは一切なかったのに!
 むしろ、眉間に皺を寄せて怖い顔をしていた。

「あんなに怒っていらしたではありませんか!」
「怒っていましたよ」
「ほら、やっぱり」
「あなたにではありません。自分にです」
「……え?」

 クラウスは観念したように息を吐いた。
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