今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末
「……私はもう、ずっと前からあなたに惹かれていましたよ」
「はい?」
今度こそ、頭の中が真っ白になった。
目の前にいるクラウスが、あのクラウスが! 鉄壁のクラウスが!!
「すみません。今の台詞、もう一度お願いします」
「は?」
「今、とても大事なところです! 夢にまで見たシーンです!」
「……ずっと前から、あなたに惹かれていたと言いました」
聞き間違いではなかった。
ビクトリアは目を見開く。パンパカパーンと頭の中で祝砲と鐘がなる。
「いつからです?」
「……かなり前からです」
「かなり前?」
「少なくとも、あなたが私に好意を伝えるようになってから、ずっと気にはなっていました」
「だったら!」
ビクトリアは思わずクラウスの胸を叩いた。
「だったら、どうして何も言ってくださらなかったのですか! 三年ですよ! 私は三年間もあなた様を追いかけていたんですよ!」
「言えるわけがないでしょう。あなたは私の上司の娘で、私はただの騎士でしかない。次男だから家督も継げない。それに、年も六つも離れている」
ビクトリアは目を瞬く。
「もしかして、ご自分の立場を考えて身を引こうとしていた?」
なんともクラウスらしい考え方だ。
(なんて堅物なの! やっぱり好き!)
この生真面目すぎるところも、クラウスの魅力のひとつ。忘れようと思っていたのに、余計好きになってしまう。
「そんなこと、気になさらなくていいのに」
「そういうわけにはいきません。実は……数年前、一度だけ閣下に相談したことがあります」
クラウスが気まずそうに視線を逸らした。
「お父様に? 何を?」
「あなたと交際してもよいかと」
「……なんですって⁉」