今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末

 びっくりしすぎて思わず素っ頓狂な声が出る。
 父親はビクトリアがクラウスに夢中なことをずっと前から知っていたはず。それなのに、そんなことは一度も何も言っていなかった。

「そ、それで、父はなんと答えたのですか?」
「『娘が欲しいなら、団長とまでは言わないが、せめて副団長くらいにはなれ。話はそれからだ』と。一介の騎士であり、家督を継ぐわけでもない私は、あなたの相手として到底認められないと言われました」
 ビクトリアがクラウスの後ろを追いかけまわしては今日もダメだったと塞ぎこんでいたのを知っていたはずなのに、まさか原因が身内にあったとは。

「お父様め! あとで見てなさいよ!」

 思わず心の声が漏れる。

「今、なんと?」
「いえ、なんでもございません。続けて?」
「だから、あなたにふさわしい男になろうと、副団長を目指しました。三年もかかってしまい、申し訳ありません。実はあの日は、昇格の内示をもらって改めて閣下にあなたとの交際の許可をもらいに行くところだったのです」

 頭が真っ白になるような衝撃だ。
 まさか、クラウスがビクトリアのためにそんな涙ぐましい努力をしていたとは。

「それなのにあなたは全部すっ飛ばして、いきなり既成事実を作ろうとする」

 クラウスは深いため息を吐く。

「しかも、何をすればいいのかまるでわかっていない純真無垢な顔で。あなたは天使であり、小悪魔でもあると思いました」
「天使であり、小悪魔?」
「好きな女性にあんなことをされて、平気でいられる男がいると思いますか。本当に、理性を保つのが大変だった。あと一歩間違えば、私はあなたを抱きつぶしていた」
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