今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末
ふいっと目を逸らしたクラウスの耳が赤い。
ビクトリアの胸が、どくんと大きく鳴った。
(え、何? クラウス様、素敵すぎない? かっこよすぎない⁉ あのちょっぴり怒った顔の下で、私を襲わないように理性と戦っていたってこと⁉ 抱き潰す? どうぞ抱き潰してください!)
こんな素敵な男性がいるだろうか? いや、いない!
反語で力強く断言してしまう。
王国騎士団の副団長。剣の腕はもちろん、指揮能力も人望も実績も必要とされる要職だ。
二十五歳でその立場に立つのは、異例の昇格と言っていいはずだ。
「私ばかりが一方的に好きだと思っていました」
「そんなことはありません。むしろ、私のほうが好きだと思います」
「いいえ、私のほうが好きですわ」
ビクトリアはスンとした顔で言い返す。
こっちは三年間、クラウスだけをひたすら見つめ続けてきたのだ。この恋心について話し始めたら、三日三晩しゃべり続ける自信がある。
ただ、今は──。
「クラウス様、もう一度言ってください。お願いです」
懇願するように見上げると、クラウスはくすっと笑う。
ビクトリアは目を見開く。
彼がこんなふうに笑うところを見るのは初めてだったから。
「ビクトリア、きみが好きだ」
ゆっくりと、言い聞かせるように告げられた言葉。
三年間、ずっとずっと欲しかった言葉だ。
胸のあたりが熱くなり、ビクトリアの目から涙が溢れる。